発達障害の特性のある人が「やりたいこと」を減らせない理由

──本田先生が考案された「発達の特性がある人の時間配分」という図も、先日SNSで話題になっていました。

 本のなかでも、「仕事とプライベートのバランスをうまくとるのが得意な人もいれば、苦手な人もいる」と書かれていましたよね。

本田:ええ。これは、1日の生活を「睡眠」「身の回りのこと」「やりたいこと」「やるべきこと」の4つに分けて、その割合を図式化したものです。

 左端が、「やりたいこと」を自由にできる日。そして右端は「やるべきこと」が多くて「やりたいこと」をするための時間が少ない日です。

 発達障害の特性がない一般の人は、やりたいことを削り、やるべきことを優先できるんですよ。忙しい日が続くとストレスが溜まるから、週末に時間を捻出してリラックスする日をつくろうとか、そういうバランス調整も自然にできるんです。

──そうやって、オンとオフの切り替えができるのが理想ですよね。私もずっと昔からそうしたいと思い、いろいろなストレスコントロール法などを試していたのですが、なかなかできるようにならなくて……。

本田:そうですね、難しいですよね。ただ、これは私が患者さんたちをこれまで診てきたうえでの実感ですが、オンとオフの切り替えが苦手な人は、どれだけ努力してもできるようにはならないんですよ。

──ええ! がんばっても無理ですか、やっぱり。

本田:なかには努力してできるようになる人もいるでしょうが、ほとんどの人は難しいんじゃないでしょうか。

 むしろ、バランス調整のために努力することが苦痛になって、うつ状態になってしまう人もいますから、一概にワーク・ライフ・バランスを目指すのがいいとは限りません。

──なるほど。さらなるストレスを生んでしまう場合もある、と。

本田:発達の特性があって、ワーク・ライフ・バランスをとるのが苦手な人の場合、「やるべきこと」が増えていても、「やりたいこと」がなかなか減らせないんです。どんなに忙しくても「これ以上は減らせない」というラインがあるわけですね。

 むしろ、「やるべきこと」が増えた部分がストレスになって、そのストレスを発散するために、「やりたいこと」をやるためのさらなる上積みが必要になるんです。

──そうか。義務感に縛られて余計にスケジュール管理がうまくできなくなる可能性もあるんですね……。それだと、本末転倒ですよね。