忙しくなった途端、「仕事ができない人」になってしまうことも
──本田先生は数々の患者さんを診てこられたと思うのですが、この図を考案されたきっかけは何かあったんですか?
本田:とくに、お子さんに発達障害の特性があり、親御さんはそうではない、という場合の説明として使うことが多かったですね。
「仕事や家事、人からの頼まれごとなど、やるべきことをやるためにやりたいことを削る」のを当たり前にできる人は、「『やるべきこと』があるのに、『やりたいこと』を優先させている人」の行動が理解できないんですよ。
日本人のいいところでもありますが、やっぱり、「自分よりも他人を優先する」ことが美徳とされているところ、あるでしょう?
──ああ、たしかにそうですね。他人よりも自分を優先させるって、人としてどうよ? 的な……。
本田:もちろん、全員が全員ではないでしょうけど、そう思う人が多いのは事実ですよね。
そういう価値観のなかでは、「好きなものに対してはいくらでもエネルギーを使えるけど、ちょっとでも興味から外れるとまったくもってやる気がしない」という発達の特性がある人の行動は理解されにくいんです。
だから、周りからは「サボっている」と思われたりする。
──やるべきことを当たり前に優先させられる人は、「遊ぶ時間があるならできるでしょ」と思ってしまうのかもしれませんね。
本田:ええ。あとは、仕事で無理をして二次障害になってしまい、結局退職せざるを得なくなった、というケースもいくつかありました。
パート勤務のときにはバランスを崩すこともなく働けて、「仕事ができる人」として評価されていた。
けれど、会社から評価されて正社員として勤務するようになった結果、自分の「やりたいこと」をやる時間がなくなってストレスが溜まり、仕事にも支障が出て、体がもたなくてつぶれてしまった……というような。