即レスは仕事ができる人の必須条件。そう思っている人も多いだろう。しかし、発達障害専門の精神科医・本田秀夫氏は、この習慣がある人ほど、生きづらさが圧倒的に増幅する「過剰適応」に陥る可能性が高いと語る。今回は、本田氏が精神科医として30年以上のキャリアを通して見つめてきた「生きづらい人が自分らしくラクに生きられる方法」についてまとめた書籍、『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』の発売を記念し、生きづらさを緩和するための働き方について聞いた。(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)
周りに合わせすぎてつらくなる「過剰適応」とは
──自分らしく生きたいと思っても、「人の期待に応えたい」という気持ちが強すぎたり、人の期待を裏切ることに強い罪悪感を抱いてしまったりして、人からの頼みを断れないという人も多いのではないかと思います。
本田秀夫(以下、本田):ああ、この本のなかでも書きましたが、本当は自分のやりたいことではないのに、周りに合わせすぎてつらくなってしまう「過剰適応」のパターンですね。
一見、社会にうまく馴染んでいるように見えますが、その実、本人は周りが想像できないくらいヘトヘト。
このように、「過剰適応」して本来の自分を抑えすぎている場合、「断れるときは断ろう」と思っていても、いざ頼まれごとがきたとき、とっさにOKしてしまったりするんです。いわゆる優等生タイプの人に多いですね。
──いきなり「やりたくないことは断る」ように切り替えるのは難しいと思うのですが、「こういったステップですすめるといい」など、考え方のコツがあれば教えてください。
本田:まずは、その「人の期待に応えられない」ことに対する後ろめたさが、どこから来ているのか探ってみるのがいいかもしれません。
たとえば、「いい人と思われたい」「嫌われたくない」という気持ちが強いなど、心のクセを見つけられるといいと思います。
もちろん、その「いい人と思われたい」という気持ちがその人にとっての人生最大の目標だとしたら、それをあえて捨てる必要もないと思うんです。
だけど、「生きづらさ」を感じている理由は、他にやりたいことがあるのに「いい人に思われなきゃいけない」を義務にしてしまっているからかもしれません。
もし、その気持ちはもう手放してもいいかな、と思うのであれば、あとは実践編です。