円安局面は、11月14日の野田佳彦首相が国会での党首討論で、安倍晋三自民党総裁に対して、衆議院解散を認めたところから始まった。これぞ、まさしく晴天の霹靂。

 対する安倍総裁は、野田首相に先手を取られたかに見えたが、その後の動きは速かった。民主党が苦手とされる経済政策の分野で、勝負を賭ける。その中核が15日に披露された大胆なリフレ構想だ。

「政権を取ったら大胆な金融緩和を行っていく。一番いいのはインフレ目標を持つこと」「(資金供給を)無制限にやって、続けていくことによって、インフレ期待が起こる」

 他にも、日銀法改正を視野に入れると言い、当初は日銀総裁の解任権にも言及した。これは、金融政策の独立性を修正することになる。さらに、後日撤回したが、日銀が建設国債を直接引き受けることを示唆する発言も行う。

 少なからぬ金融市場の関係者が、10年間で200兆円の公共事業を実施するという国土強靭化計画の財源捻出を、日銀への建設国債の引受けで行おうという意味ではないかと耳を疑った。

 一連の発言はびりびりと刺激に富んだ。それに反応して、14日以降のドル円レートの流れは円安へと向かう(図表1参照)。円安は、直前の1ドル79円台からわずか7営業日の間(11月14日~22日)に、一気82円へと+3円まで進んだ。

 日経平均株価も、円安に連動するかたちで、あっという間に、8661.05円(13日終値)から9366.80円(22日終値)へと+755円(+8.8%)も上昇する。多くの人が、もしも12月16日の衆議院選挙後に政権交代があれば、本格的なリフレ政策が推進されて、さらなる円安誘導もあり得ると予想するようになっている。