「大人の男性がピンクや花柄などを違和感なく取り入れるファッションが、以前より少しずつ広がりをみせているように思います。レースやシアー素材のシャツや、パールのアクセサリーなど、これまでの男性のワードローブにはなかったデザインを取り入れるブランドも出てきました」

 また、「ジェンダーレス」の装いは、なにも「女性が男性の服を着る」「男性が女性の服を着る」という2パターンにとらわれるものではない。

「世界的ブランドのなかには、性別をぼかすような見せ方をする『ジェンダーニュートラル』なファッションを提案し始めているところもあります。そもそも『ジェンダーレス』は『性別にとらわれない』という意味合いであり、『自認している性別とは異なるほうの服を着る』という意味ではありません。日本でもどちらかと言えば、『過剰に女っぽくないデザインの服を選ぶ』といった傾向が強いようで、実際に各ブランドから提案されている服にもそうした意識が見られます」

「人にどう見られるか」から
「自分が何を着たいか」へ

 宮田氏によると、今回のコロナ禍もジェンダーレスファッションの広がりを後押ししているという。

「コロナ禍でおうち時間が増えたことで、人と会う機会が少なくなりました。他人の目を気にする必要性が減ったことにより、『自分の好きなファッションを楽しみたい』という人が増えたのではないかと思います。人の目を意識した装いから、自分のためのファッションへという流れにつながっていると考えます」

 そして、今後ニーズの広がりが期待されるジェンダーレスの装いは「ビジネスチャンスとみるブランドが増えていくだろう」と宮田氏は分析する。ただし、男性にも女性にも体形的な特徴があるため、「マーケットの規模としては一定の範囲にとどまるだろう」とも予測する。

「そもそも、どんな服を着るのも自由であるべきで、何を着るかは本人が選ぶべきことです。今回のジェンダーレスファッションの動きがみられる以前から、スカートをはいていた男性もいるでしょう。ただ、コロナ禍以降の時代が以前と違うのは、人に見てもらうためではなく、自分の気持ちを整えるためのコーディネートが増えたということです。これにより、気持ちが穏やかになれたり、ポジティブになれたりすることが、心の健康にもつながっているように思います」

 これからは、性別や他人からの目に縛られず、自分自身のために自由におしゃれを楽しめるようになっていくのだろう。

【訂正】記事初出時より以下のように訂正します。
12段落目:「ジェンダーレスモデルの中山咲月さんといった」を削除
(2022年4月13日14:39  ダイヤモンド編集部)