伊藤忠の経営を補佐する
エリート集団の業務部
1957年、高原友生は金属部の鉄鋼原料(石炭)担当から異動し、新設された業務部に加わった。
業務部は軍事組織でいう参謀本部であり、経営者の判断に役立つ情報収集、情報処理をする。経営判断に役に立つ提案はするが、経営者の判断に対しては、意見を求められたときだけ述べる。エリート集団ではあるけれど、会社の進路を決定する組織ではなく、あくまで経営を補佐する「幕僚」で構成された部門だ。
繊維商社から総合商社へと変わるために扱い商品を増やしていた伊藤忠にとっては長期的かつ全社的に進路を考えるセクションが必要だったのである。
業務部は伊藤忠の業容に合わせて増員されていく。第一部(繊維)、第二部(金属、機械、石油)、第三部(食料、木材、化学品)と3つのセクションに分かれた。
部員は社内からえりすぐったエリートたちだった。高学歴で情報の分析に長け、リポートの執筆など、文章が書ける人間が選ばれた。
ちなみに伊藤忠の最近の社長では丹羽宇一郎が業務部長を務めているが、小林栄三、岡藤正広は業務部には所属していない。
それを考えると、営業の最前線で活躍する人間や動物的な勘で商売の道を切り開くタイプの人間は、業務部には選ばれないのではないかと思われる。