田中:学び、気づき、圧倒的成長。すべてはコスパ思想でしょう。

今野:「本はコスパがいい勉強法」だとかって、よく言われます。

田中:言われますね。コスパを求めすぎる人は、自分が出遅れていることに直面したくないんだと思うんです。がんばって東大行ったり司法試験に通ったりMBA取ってないってことから逃げてる。もっと言えば、お金持ちの家に生まれなかったことからも逃げてるんですけど、そこは直視しないといけない。どうしようもないですよ。

今野:少し前、「親ガチャ」という言葉が話題になりました。

田中:結局、あれもコスパの軸で人生を見ている面がありますよね。「本来、受け容れざるを得ないもの」をあとから考えたってしょうがないんですよ。本当にそこを見つめ直したいなら、世の中には毎日のように爆弾が降ってくる国だってあるのに、そんなこと心配する必要もなく「今日は雨降ってたいへんだね」とか「あそこのハンバーガーはカロリー高いよね」って言えているラッキーはあんたのなかでどこ行ったん? と思います。

今野:いまの話、かなり辛辣ですよ。「なに今さら何がんばってんの?」って。

田中:わたしの話ですよ。コスパ志向にとらわれたら不幸になるな、と。

その大きなデメリットの1つが、「不機嫌に生きなきゃいけなくなること」です。たとえば今日わたしが着てるこの服、たまに「コム・デ・ギャルソン?」「ヨウジ・ヤマモト?」とか言われるんですけど、上下ともに「GU」なんですね。

──え、そうは見えない。

資本主義が「不機嫌な人」を増やすしくみ上が1900円、下が1290円

田中:「それ、どこの服ですか、ギャルソンですか? ヨウジ・ヤマモトですか?」と言われて、「いやぁ、GUです。ふふふ」とか言ってるのは気分がいいですよね。コスパがいいわけですから。ほんとは安いのに「あの人は高級な服を着ている」と思われたらうれしいので。

でも、それを狙って、コスパばっかり考えているとどうなるか。一日じゅう町なかを練り歩いて、誰にもなにも言われなかったらどうか。ショックを受けるんですね。「はぁ、誰にもなんも言われんかったわ」と落ち込んで、不機嫌になる。そんなことで不機嫌になるって、もったいないじゃないですか。

──今回の『会って、話すこと。』でも「機嫌よく生きる大切さ」が語られているんですが、田中さんは「機嫌よく生きること」をどうしてそれほど意識しているんですか?

田中:だって機嫌が悪い人と一緒にいると、自分の機嫌も悪くなっていくじゃないですか。