英蘭系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルは、環境・社会・ガバナンス(ESG)への投資におかしな点があることを示す好例だ。同社は率先して顧客重視の炭素排出量削減を掲げ、他の石油スーパーメジャーに比べて化石燃料からの脱却を積極的に進め、パリ協定の削減目標の達成に最も近い位置につけている。同社のESG評価は、米電気自動車(EV)大手テスラや米燃料電池機器メーカーのプラグパワーをも上回るほどだ。その結果はどうか。シェルに対する市場の評価は一貫して低く、石油投資をあからさまに拒否する大手資産運用会社からますます敬遠され、訴訟を起こされた上に排出削減を命じる判決を受けた。米ヘッジファンドのサード・ポイントがここにきて、理論的な観点から完全に筋の通った答えを示した。シェルを2つに分割するというものだ。シェルが構築してきた「グリーン」事業および移行事業は、成長重視の投資を目指す株主を引きつけ、株価が一段上乗せされるはずだ。一方、「ブラウン」な石油事業は、死にゆくビジネスから手厚い配当を引き出す戦略の投資家にとって魅力的で、株価は割安かもしれないが、ばく大な現金を生み出すことだろう。サード・ポイントの創業者ダニエル・ローブ氏は、投資家宛ての書簡の中で、誰も満足させられない現在のごちゃ混ぜ状態よりも、その方がESGにとっても株主にとっても良いと主張した。
ESG高評価シェルの落とし穴
「グリーン」なシェルと「ブラウン」なシェルに会社を分割するよう求めるアクティビストの提案が浮き彫りにしていることとは?
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