「国民的スネ夫」古市憲寿のコスパ最強な立ち位置

古市憲寿古市憲寿氏 Photo:JIJI

「とくダネ!」で、かの小倉智昭キャスター転がしでよく知られた、器用で都会的な社会学者、古市憲寿。同じ社会学者ということで宮台真司氏の椅子に座ったのかと思われがちだが、そうではない。昨年のソフトバンク「ドラえもん」CMシリーズで、古市氏が実写版スネ夫役で出てきた時、私は制作者の慧眼にひれ伏した。そうだ、古市憲寿は(ルックスだけじゃなく)存在が「国民的スネ夫」なのだ。

 彼は世間で「元社会学者」と皮肉られることもあるように、研究活動に全くガツガツしていない。小説への進出、コメンテーターメインの活動を通して、“スネ夫的立ち位置”というウルトラニッチを編み出した。小倉智昭キャスターや上野千鶴子氏、松本人志氏、現在は橋下徹氏など、場の「ボス」の隣ではじめからサブ位置を取り、飄々とイジり、重たいことは言わず行わず、面倒なことになる前にサッと場をあとにする。コメントが面白くてインテリなのは無論だが、「こんなに知ってます」といった暑苦しい押し方は一切しないところが淡泊で現代的でお洒落な印象を残す。だから視聴者から変にカロリーの高い愛を向けられることも稀で、その反動として変にカロリー高く憎まれることもない、ものすごくコスパのいいキャラクターだ。

 そしてそのコスパの良さと器用さは、「重たいラスボス」の隣に「0.6」くらいの存在感で置いておきたくなる。だけど「社会学者」。しかも女子ではなくて「中性的な男子」。慶應SFCと東大の両方を押さえた学歴。文句なく無競争状態である。でもなんか悔しいのは、ボスに気に入られるキャラと、ボスに気に入られる自覚を併せ持つ「スネ夫み」のなせるわざか。