YouTubeで、ホームレスらの命を軽視した「激辛」発言をアップしたタレントが炎上した。しかし一般の芸能人と違い、炎上し、注目を集めれば集めるほどそれがアクセス数となって収入が伸びるのがネットの世界である。こうした構造上、ネット上のコンテンツにジャーナリズムが根付き、健全化するのは難しいのではないか。ネットで活躍してきたコラムニストだからこそ思うこととは……。(コラムニスト 河崎 環)
受験勉強の延長線上で恋愛や人生を「攻略」する発想の限界
メンタリストDaiGoが、自身のYouTubeチャンネルで生活保護受給者やホームレスの命を軽視した発言をしたとして炎上、波紋を呼んだ。「激辛」と付記した動画で「生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら、猫を救ってほしいと僕は思う」「ホームレスの命はどうでもいい」「言っちゃ悪いけど、いないほうがよくない?」「じゃまだしさ、プラスになんないしさ、くさいしさ、治安悪くなるしさ」との発言に、優生思想的である、ヘイトクライムを誘発しかねない、などの指摘が殺到。生活保護に対する偏見や悪感情の深まりを懸念した厚生労働省が「生活保護は国民の権利です」と公式Twitterで発信する事態となった。
「メンタリスト」との耳新しい呼び名で2010年代のテレビに現れ、数々の自己啓発書を出し、恋愛や職場などにおける人間関係で「相手の心を自由に操る」方法を伝授する、優れて器用なインテリタレントとして重宝され、活躍を続けてきたDaiGo。早期からニコニコ動画やYouTubeの発信プラットフォームとしての価値に気づき、テレビでの知名度を生かしてダントツの登録者数、動画再生数を打ち立て、巨額のサブスク・広告収入を手にするなど、いまどきの“withテレビ”配信シフト成功タレントの代表格である。
だが、他人の心理にも世知にも長けてスマートな今年34歳の彼が、大学を出てから瞬く間に世間へ認知されたこの10年ほどの間に、世に向けて何を提供してきたのかをあらためて考えると、それは実に2010年代らしい、ネット発信にピタリと寄り添ったコンテンツだったことに気づく。線の細い受験エリートが、受験勉強の延長線上で恋愛や、面倒で複雑な人間関係や、いちいち自分たちを陥れようと意地悪くハードモードを仕掛けてきているとしか思えない人生を“攻略”してきたスキル系、自己啓発系発想の限界~そしていくばくかの傲慢~をそこには感じるのだ。