韓国最大のハンバーガーチェーン、マムズタッチPhoto by Shuhei Inomata

韓国最大のハンバーガーチェーン、マムズタッチが4月16日、渋谷に日本第1号店を開いた。開店1週間で来店者数は1万人超と驚異的な盛況をみせる。日本のファストフード業界に現れた“黒船”の戦略と狙いを関係者に聞くと、ある「思惑」が見えてきた。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)

橋頭堡となる渋谷店は「世界最大規模」
日本で成功し、先進国に打って出る強気戦略

 バンズからあふれんばかりの分厚いチキンにかぶりつくと、熱々の肉汁がジュワっと染み出す。開店初日、若者を中心に満席の店内で味わったマムズタッチの主力商品「サイバーガー」は、筆者が5年前の韓国留学中に食べた味と全く変わらなかった。

「全商品の調理工程を店内で完結させ、どの店舗でも高品質の味を提供する。特に、冷凍パティでは実現しない鶏肉のジューシーさは、マムズタッチの強みです」とマムズタッチ関係者は胸を張る。価格も、サイバーガー単品で税込み520円と、現在のウォンレートで換算した本国での販売価格と同水準に抑えた。

 味や価格だけでなく、出店場所も注目される点の一つだ。日本1号店を開いたのは、昨年11月下旬までマクドナルドが39年間路面店を構えていた渋谷の超一等地。地下1階~地上2階に220席を備える。

 マムズタッチ関係者によれば、ソウル市内にある同社最大規模の店舗でも100席程度とのことなので、タイ、モンゴル、米国に出店している海外店舗と比較しても、現在の渋谷店は世界最大と言える。大胆な初手と見られても不思議ではない。

 大胆さはそれだけではない。第三国での出店はいずれもマスターフランチャイズ(MF)形式を採用しているが、渋谷店は海外で唯一の直営店の形を取っているのだ。同社は日本法人を立ち上げて、日本に腰を据えてブランドを展開していく構えだ。

 なぜ、マムズタッチは日本に強いこだわりを見せるのか。

 次ページでは、マムズタッチが日本で思い描く出店攻勢や、韓国企業ならではの課題についてCEO(最高経営責任者)へのインタビューを踏まえて解説していく。