バージニア州はもともと人種差別色が強い南東部の州で、大統領選挙では1968年から2004年まで共和党が連続して勝っていたいわゆる「レッド・ステート(赤は共和党のシンボルカラー)」だった。

 ところが経済発展とともにハイテク産業の進出が進み、高学歴でリベラルな都市住民が増えたため、2008年のオバマ大統領誕生以降は民主党4連勝ですっかり「ブルー・ステート(青は民主党のシンボルカラー)」に変わってしまった感があった。

 しかし振り返れば、南北戦争時代は人口の31%、約50万人が黒人奴隷だったこともあり、保守的で白人至上主義が根深く残っている土地柄である。

 その証拠に、2017年の夏には州内のシャーロッツビル市で大規模な集会を開いた白人至上主義者とそれに抗議する人々が激しく衝突し、非常事態宣言まで発令された。

 きっかけは市内の公園にある南部将軍の銅像撤去を市議会が決めたことだった。その約1カ月前には白い頭巾を被った白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)もデモを行っていた。

 つまり、現実のバージニア州の政治色はレッドでもブルーでもなく2色が微妙なバランスで混在する「パープル・ステート」で激戦区なのである。

民主党候補が
敗北した二つの理由

 それにしても、2004年から08年まで州知事を務めた民主党の大物で、3カ月前までは楽勝と思われていたマコーリフ候補がなぜ敗れてしまったのだろうか。

 それには大きく分けて二つの理由が考えられる。バイデン大統領の不人気と、潤沢な選挙資金を確保していたヤンキン候補の巧みな「トランプ隠し」戦術だ。

 内外から批判を浴びたアフガニスタン完全撤退、コロナによる物流の混乱、ガソリン価格の高騰などで、バイデン大統領の人気は就任からほぼずっと下降線をたどってきた。そのうえ、肝いりだった大規模なインフラ投資などの経済政策も民主党内の反発で膠着(こうちゃく)状態に陥り、有権者の間に失望が広がった。