来年の中間選挙で
トランプ色を薄められるか

 結局、ヤンキン候補はこの「トランプ隠し」でパープル・ステートを手中に収めたのだ。現地メディアはさっそくこれを「トランプ・ライト(Trump Lite)」と呼んだ。低カロリーのコーラのように、あえてトランプ色を薄めた戦術という意味だ。

 米アトランティック誌のデビッド・グラハム記者によれば、今回の知事選はトランプ後のトランピズム(トランプ前大統領の政策や発言の根底にある考え方や政治姿勢)が、これからどんな姿になるかのテストケースになったと、次のように分析した。

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「トランプとは距離をおきながらトランプ流の主張をすることで勝利を収めたヤンキン候補は、これからの選挙でトランプ抜きでも共和党がやっていけるという可能性を示した」

 確かに、トランプ離れした共和党員や無党派層を味方に付けたいが、まだ多くいるトランプ前大統領支持者の応援も欲しいというジレンマに陥っている共和党にとって、今回の結果は来年の中間選挙に向けて「トランプ・ライト」というひとつの選択肢を提供したことは間違いないだろう。

 しかし、政治ジャーナリストは往々にして地方選挙を深読みしすぎる傾向があることも忘れてはいけない。

 全国レベルでの共和党に対するトランプ前大統領の影響力が今でも強大なことは、世論調査にはっきり表れている。トランプ前大統領の支持者による前代未聞の連邦議事堂襲撃事件を扇動した疑いがあるにもかかわらず、10月中旬に行われたヒル・ハリスの調査では77%、モーニングコンサルト/ポリティコ調査では67%がトランプ前大統領にもう一度大統領選に出馬してほしいと回答している。

 バージニア州知事選で12年ぶりに勝った今も、共和党はトランプ前大統領という自らが生み出した「熱病」にうなされている。