多様な人がいて、多様な人に敏感な学部での展覧会

 優れた作品を擁する展覧会はできるだけたくさんの人に見てもらうことで価値を高めていく。緊急事態宣言が解除されて、大学のキャンパスに多くの学生が戻ってきたことが何よりも喜ばしい。

「学生たちが行き来する廊下に、今回の展覧会の顔となるような大きな作品を飾っています。多くの学生は、当学部が学芸員資格を出していることも、特別支援学校の存在も知っているので、展示作品を唐突感なく理解することができます」(津田氏)

 展覧会場となったカフェを頻繁に訪れる教員のひとりは、「多様な人がいて、多様な人に敏感な学部の象徴的な展覧会」といった賛辞を贈る。

 また、世間一般で開催される展覧会と遜色ないほどのカラー印刷のチラシが学生(実習生)自身によって作られ、広く配布されていることも見逃せない。実際、筆者は、SNSでそのチラシを目にし、今回の取材に至った。「展覧会を広報することも実習のうち」と津田さんは言う。

 そのチラシの裏面に記された文章が、「RAIN RAIN はれのちあめ、今日はいい天気」の展示作品の内容と会場への誘(いざな)いを分かりやすく表している。

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 神戸大学附属特別支援学校の美術の授業は非常に体験的だ。見ることや聞くことはもちろん、手触りや匂いなど、五感を最大限に活用しながら行われる。生徒たちはその中でにぎやかに、楽しみながら自分の制作物に向き合い、作品づくりに取り組む。

 ステンシル版画による共同制作は太陽と雨をそれぞれモチーフとしており、エネルギッシュで生き生きとした作品だ。2グループがそれぞれ手を加えていくことで、授業ごとに変わっていく自分たちの作品に新鮮な驚きを持ちながら形づくられている。

 個人制作は、黒い画用紙に豊かな色彩で描かれたあじさいをモチーフにした作品である。どうしてこの色を選び、このように描いたのか。制作の過程に想いを馳せながらゆったりと鑑賞できるカフェアゴラにお越しいただき、作品のエネルギーに触れてほしい。
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