SDGsゴール12について、大学生と企業と地方団体が一緒に考えたこと

「SDGs」は、テレビ、新聞、雑誌、ネットニュースといったメディアで多く特集され、いまや、個人ブログやSNSでもそのアイコンを頻繁に見かけるようになった。義務教育の小・中学校のカリキュラムでも取り上げられることは珍しくなく、これから社会に出る学生とともに企業勤めのビジネスパーソンも知見を深めている。そうしたなか、コロナ禍の5月に青山学院大学(東京・渋谷区)でSDGs関連の授業が行われた。大学生が企業や地方行政とともにプラスチックごみ問題を考える、衣服の新たなリサイクル方法を見つけていく――2週におよんだ、その授業の様子をレポートする。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「SDGsの誕生理由とは?今後どんな成果を実現していくのか、改めて振り返ってみる」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

遠野市から発信された情報をオンラインで受ける学生

「世界食料デー飢餓ゼロキャンペーン」や「フェアトレード・ウィーク」の開催など、SDGsの達成に向けて多くの活動を進めている青山学院大学(東京・渋谷区)*1 。同大学のサイト内で「SDGs」というワードを検索すればたくさんの情報に出合えるが、在籍する学生たちはSDGsをどうとらえているのだろう?

*1 青山学院のスクール・モットーは「地の塩、世の光」。「あなたはかけがえのない存在だ」との宣言のもとに青山学院は立っている。

 ダイバーシティ&インクルージョンメディア「オリイジン」は、今年(2021年)入学の1年生を対象に行われた授業を2週にわたって取材した。授業のテーマは「SDGsの達成に向けた活動」――全学共通の教養教育「青山スタンダード科目」の「フレッシャーズ・セミナー*2 」枠のひとつで、少人数制クラスのセミナー(演習)形式だ。

*2 専門的なテーマを学び、“学びの作法”を身につける「フレッシャーズ・セミナー」は、選択科目として、青山学院大学に入学したすべての学部の1年次生が対象。

 担当教員の国際政治経済学部・田中(坂部)有佳子助教*3 はこう語る。

「本学では、人と社会に自ら責任を持って貢献する“サーバントリーダー”の育成を目指しています。それはSDGsの『誰一人取り残さない』の理念と繋がるもの、という認識です」

*3 青山学院大学では、「助教」が職位の正式な名称になっている。

 受講した1年生は、学期末にSDGsの課題解決のアイデアをレポート提出するという。

 5月下旬に行われた授業には、「持続可能な育成プロジェクト*4 」代表の佐々木徳三郎さんの呼びかけのもと、SDGsを積極推進する「遠野市役所/遠野みらい創りカレッジ*5 」(岩手県遠野市)と「株式会社アキュラホーム*6 」(東京都新宿区)が参画し、講義を受ける13人の学生に向き合った。

*4 2019年に任意団体として設立され、SDGsを課題にした企業(ビジネスパーソン)と学校(学生)の連携を諮ることを活動のひとつにしている。代表の佐々木徳三郎さんは、一般社団法人 精神・発達障害者就労支援専門職育成協会が認定する「就労支援者(ES)」として、企業の合理的配慮と障がい者のメンタルケアを中心に、精神・発達障がい者の就労支援も行っている。
*5 遠野みらい創りカレッジ は2014年(平成26年)4月に遠野市と民間企業の連携協定により設立。2年後には一般社団法人化し、理事・監事に市内企業経営者等を登用した地域経営となる。地域(遠野)の“みらい創り”に向けた課題を通し、地域および産学官がそれぞれの価値を創造することを目的として、中高生向けの社会教育プログラムの企画・開発・運営など、さまざまな事業を行っている。
*6 大工出身の宮沢俊哉氏が1978年10月に創業した木造注文住宅メーカー。住宅事業(各種木材注文住宅の建設・販売など)、工務店支援事業(工務店・ビルダーのノウハウ提供)、研究開発事業(住宅及び関連品とシステムの研究開発など)を主に行っている。従業員数1271人(2019年4月1日現在)。

 第1週のテーマは「コロナ禍においてプラスチックゴミが増えた問題からSDGsの理解に繋げる」。

 1コマ90分間の授業はすべてオンラインで行われ、最初に、「持続可能な育成プロジェクト」の佐々木さんからSDGsについての概況説明があり、遠野市役所(生涯学習スポーツ課)の西村恒亮さん*7 が担当するパートに引き継がれた。学生は「事前学習」として、西村さんが作成した資料「遠野市ってどんなところ?」で、遠野市の地域特性や産業・資源をすでに理解しており、そのうえで、西村さんの講義「農業廃棄物『ホップの蔓』アップサイクルによる地域内循環型経済の構築を目指して」に傾聴した。学生それぞれのモニター画面が、遠野市から発信する西村さんとリアルタイムで繋がったかたちだ。

*7 西村恒亮さんは、2021年3月末まで、遠野みらい創りカレッジに派遣されていた。

 30分あまりの講義で、「持続可能なホップ生産で地域の活性化に繋げたいとの想いから、農業廃棄物のホップの蔓に付加価値をつける取り組みを、遠野みらい創りカレッジと横浜国立大学大学院研究室が共同研究していること」を理解した学生たちは、その後、Zoomのブレイクアウトルーム機能で3つのグループに分かれ、SDGsゴール12「つくる責任 つかう責任」の実現に向けた「プラスチックごみの削減方法」を討議した。