特別支援学校の生徒たちの絵画が、大学の展覧会で光り輝いている写真提供:Eiji TSUDA

“生徒たちによる花と雨と光の作品を見て、聞いて、触れることで体感すれば、あなたの「雨」の見方はリズミカルで鮮やかなものにきっと変わるだろう”――こうした紹介文の展覧会「RAIN RAIN はれのちあめ、今日はいい天気」が神戸大学の鶴甲第2キャンパスで開かれている。展示された絵画の作者は神戸大学附属特別支援学校の生徒たち、制作・運営は、博物館学芸員の資格取得を目指す大学生たちだ。「オリイジン」がその展覧会の様子を現地で取材した。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

「RAIN RAIN はれのちあめ、今日はいい天気」

 神戸大学国際人間科学部(兵庫県神戸市)のキャンパス内のカフェ*1 で、ダイバーシティ&インクルージョンメディア「オリイジン」にとって興味深い展覧会が行われている。

 題名は「RAIN RAIN はれのちあめ、今日はいい天気」。博物館学芸員の資格取得を目指す学生(実習生)の「学内実習」として運営されているものだ。

 展示作品の作者は神戸大学附属特別支援学校(兵庫県明石市)の生徒たち。展覧会は24点*2 の絵画を壁2面に飾った小規模なものだが、個性的な作品群が巧みに施された空間でオーラを放つ。

 神戸大学附属特別支援学校の校長であり、「博物館実習」科目の担当教員でもある津田英二教授(神戸大学人間発達環境学研究科)に話を聞いた。

「今回の展示は、16年間続けている博物館実習の一環で、コロナ禍の昨年に続き、特別支援学校の生徒の絵画を展示対象にしました。学芸員資格に必要な科目『博物館実習』の学生たちが、それぞれの生徒の作品にしっかり向き合い、展示によって最大限に見せることを追求しています」

「博物館実習」による展覧会は、新型コロナウイルス感染症が拡大する以前は大学構内ではなく、神戸市内の施設*3 で行われていた。テーマはもちろんのこと、展示を行う学生(実習生)も毎年異なり、たとえば、12年前の2009年は地元・神戸の仏画家として知られる豊田和子さんの作品を対象にする*4 など、展覧会の内容はバラエティーに富んでいる。

 誰が、何をテーマにして、どういう作品をどこで展示し、誰に見てもらうかで、作品に吹き込まれた作者の思いも違うかたちで見えていく。

 今年度に「博物館実習」科目を履修している学生(実習生)は6人。津田さんが指導する、その学生たちの “学びの成果”が「RAIN RAIN はれのちあめ、今日はいい天気」だった。

*1 神戸大学国際人間科学部のA棟6階にある、学生と教職員の福利厚生のために設けられた「カフェ アゴラ」。
*2 個人制作の作品が21点、共同制作の作品が3点(うち2点は廊下に展示)。
*3 神戸大学大学院人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センターが運営する、子育て支援を核とした共生のコミュニティ形成の拠点「のびやかスペースあーち」。
*4 2009年3月3日~2009年3月5日「豊田和子・命の作品」展