大学生たちと特別支援学校の生徒たちの交流

 津田さんは、展示する作品と学生(実習生)の出会いをことさら大切にしている。仏画家・豊田和子さんの展覧会を催した実習でも、当時80歳の豊田さん本人に学生(実習生)自身が対面し、神戸大空襲の経験から画家になった話などに触れていった。

 今回は、6人の学生(実習生)が神戸大学附属特別支援学校を訪れ、校内に滞在して、絵画を描いた生徒たちと交流したという。

「学校を訪れたことで、実習生たちの展示へのモチベーションが一気に上がりました。キャンパスに戻ってからは、主体的に、これをしなきゃあれをしなきゃと動き回っていました。作者との出会いから作品への思い入れが生まれ、それが展示方法に表れていくのだと思います」(津田氏)

「RAIN RAIN はれのちあめ、今日はいい天気」の入り口に掲示された「あいさつ」文で、学生(実習生)はこう記している。

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 私たちは学芸員資格取得の実習として生徒たちの作品をここカフェアゴラにて展示するにあたり、学内の明るくにぎやかな雰囲気をそのまま伝え、生徒たちが作品を創作しているときの気持ちを感じることができるような展覧会づくりを意識しました。ぜひ見て、聞いて、触れることで生き生きとした作品を五感で味わってください。
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 展覧会は今年(2021年)9月28日に初日を迎えたが*5 、筆者の訪れた10月も進化を続け、天井からつるされた作品の傾きを津田さんが軽く手直しするなど、 “リアルタイムの鮮度とたゆまぬ学習の結実”が、会場に温かく厳かな空気をもたらしていた。

 題名にある「RAIN RAIN」は「らんらん」と読み、光り輝く様子を表す「爛々」と、「雨(RAIN)」を掛けている。神戸大学附属特別支援学校では、音楽の授業で、伝統的に「雨の音楽」(作曲:林光)を生徒たちが歌い、演奏しているそうで、その授業に繋がるモチーフで絵画制作に取り組んでいった。結果、独創的でエネルギッシュな絵が描かれ、学芸員資格取得を目指す学生(実習生)の力によって展示作品へと昇華していた。

「RAIN RAIN」というテーマを考えた、美術教科の黒川三智子教諭(神戸大学附属特別支援学校)が振り返る。

「子どもたちが強い作品を制作できるように考えました。その結果、音楽の授業とのコラボレーションにするなど、半年間にわたるダイナミックな美術の授業になりました。子どもたちも展示されることを意識しながら作品制作に取り組み、良いモチベーションになりました。学校に来て子どもたちの様子も見てくれた実習生の学生さんが、帰り際に純粋な感動を言葉で表現してくれて、とってもうれしかったです。今回の展示は、子どもたちの保護者の間でも話題になっています」

*5 来年2022年1月まで開催予定