グローバル市場で確固たる存在感を発揮している企業や経営者は、すでにSF思考を実践している――。世界の経営理論を網羅した『世界標準の経営理論』の著者で早稲田大学大学院教授の入山章栄氏はそう語る。不確実な時代にSF的な発想で遠い未来を形にしていくことの本当の意義と効用とはどのようなものか。『SF思考』の共著者、三菱総合研究所の藤本敦也氏が聞いた。(構成/フリーライター 小林直美、ダイヤモンド社 音なぎ省一郎)

日本人のSFリテラシーは世界一

――『SF思考』では、ビジネスにおける未来創造の手法としてSFの活用を提案しました。入山先生は経営学者としてSF思考についてどうお考えですか。

 めちゃくちゃ大事だと思っています。それに、SFのビジネス活用って欧米では普通に行われてますよね。『SF思考』は三菱総研と筑波大学のコラボから生まれたと聞いていますが、実は僕も筑波大学発の宇宙ベンチャー、ワープスペースCEOの常間地悟さんなどとSci-Fiプロトタイピングを研究してるんですよ。彼と「日本にもっと広めたいね」とよく話しています。

優れた経営者にはもう常識!世界標準のビジネスをドライブする「SF思考」Photo by Takehiro Goto

――個人的に影響を受けたSF作品などはありますか。

 僕はガンダム世代ど真ん中ですから、『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』『銀河英雄伝説』……と、SFの洗礼は一通り受けました。というか、日本人のボリュームゾーンって、まんまガンダム世代なんですよね。だから、日本人のSFリテラシーは間違いなく世界一です。ジェフ・ベゾス氏が人類移住計画の映像を公開したとき「このスペースコロニーはオニール型だな」とか普通に言ってたのは日本人だけですよ(笑)。先日、イーロン・マスク氏がTwitterでお薦めのアニメ作品を聞かれて7作品を挙げていましたが、それが『デスノート』『エヴァンゲリオン』『攻殻機動隊』『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』『鋼の錬金術師』『君の名は。』と、全て日本のアニメなんですよ。

――日本人は、SFの英才教育を受けたSFエリートなんですね。なのに、なぜ日本企業にSFプロトタイピングが広がらないんでしょう。

 真面目過ぎるんじゃないですか。趣味と仕事は別物だと思ってる。特に今45〜50歳ぐらいのボリュームゾーンの人たちって受験戦争も厳しかったし、真面目に1社で勤め上げようというマインドが強くて、考え方が固まってしまっています。変人が少ないんですよ。