東芝アクティビストとの対立の末、車谷暢昭社長が退任するなど経営の混乱が続く東芝。3社分割で安定を取り戻せるか Photo:NurPhoto/gettyimages

東芝が三つの会社に分割する方向で調整していることが分かった。さまざまな事業を行う複合経営から専業的な会社に組織変更することで経営判断を迅速化させるのが狙いだ。しかし、期待どおりの効果を得られるかどうかは極めて不透明だ。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

「クジラ」と「イワシ」の群れが決別
複合経営の欠点を排除する劇薬?

 東芝が進めようとしているのは、組織を「インフラ」「デバイス」「半導体メモリー」の3事業に再編した上で、それぞれを三つの会社に分割するという構想だ。取締役会や、社外取締役5人でつくる戦略委員会で検討されているところで、ある東芝関係者は「有力な選択肢の一つだ。11日の取締役会で最終決定される予定だ」と明かしている。

 かねて東芝社内では、その特異な組織体制について「クジラとイワシの群れが一緒に泳いでいるようなもの」(別の東芝関係者)と自嘲的に語られてきた。

 つまり、投資回収期間が長い発電機器などのインフラ=「クジラ」と、需給の動向を見極めながら機動的に設備投資を行う必要がある半導体などのデバイス=「イワシ」が併存しており、「事業の性質があまりに異なるためお互いに理解し合えない。歴代の経営トップがどちらか一方のことしか分からない」(同)ことが積年の課題となっていた。

 東芝が、稼ぎ頭だった半導体メモリー事業(現キオクシアホールディングス)を売却する以前は、限られた設備投資が半導体工場へ集中的に向けられ、インフラ事業などに資金が行き渡らないといった弊害もあった。

 今回の3社分割案は、そうした複合経営のデメリットを解消しようとする“奇策”だ。実現すれば大手製造業では初の取り組みとなる。モノ言う株主(アクティビスト)からの圧力が働いているとはいえ、慎重な経営判断をすることで知られる綱川智取締役会議長、代表執行役社長兼CEO(最高経営責任者)にとっては、大きな決断となる。