安いニッポン 売られる日本#15Photo:RobinOlimb/gettyimages

海外大口投資家別の「大量保有報告書」件数で、シンガポールは世界3位。ビジネスはしやすいが、一党独裁政治でおおっぴらな政府批判が難しい現実から「明るい北朝鮮」とも呼ばれる。大量保有者の顔触れを見ると、まさに「アクティビスト(物言う株主)天国」の様相だ。名門運用会社などエスタブリッシュメント(支配層)勢が目立った英米との違いがはっきりと表れた。特集『安いニッポン 買われる日本』(全24回)の#15では、コロナ発生前後に分けて、東芝、西松建設などを狙う、シンガポールの思惑を徹底分析する。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

東芝、西松建設も買われた
データで分かった「シンガポールの爆買い」

「海外から見て、割安な日本企業が買いまくられている」。その実態を探るため、延べ5万件に及ぶ「大量保有報告書」のデータを独自分析、集計し、各国・地域の日本企業爆買いのスタンスをつぶさに解説する――。このコンセプトの本特集記事、第3弾となる今回は、シンガポールを取り上げる。

 日本の上場企業を買う投資家は、株式の保有比率が5%を超えると、大量保有報告書をタイムリーに提出しなければならない。過去3年間で、シンガポールの投資家の報告書提出件数(大量保有者別)を調べると、延べ544件だった。国・地域別の件数としては英国、米国に次いで第3位である。

 この間のシンガポール全体の状況を確認すると、購入額から売却額を差し引いた買越額は2568億円だった。その内容を詳しく見ると、名門運用会社などエスタブリッシュメント(支配層)勢が目立った英米との違いがはっきり表れた。まさに「アクティビスト(物言う株主)天国」の様相を呈していたのだ。

 世界指折りの金融センターの地位を確立しているシンガポール。お金がうなるほど集まるこの国から買われた日本企業と、買ったプレーヤーの正体を、次ページからつまびらかにしていこう。

買われた日本企業ランキング