キャッシュカードを取られた被害者のつもりが……

 キャッシュカードは取られましたが、損はしていません。他の金策に走るうちに、忘れてしまうことでしょう。口座には1円も入っていないのですから、被害を被ることはないだろうと高をくくっていました。

 数カ月後、銀行から手紙が届きます。銀行口座を凍結したというのです。しかし、残高がゼロなのですから、どうでもいいと放置することでしょう。しかしその後、警察から出頭命令が来ます。

 自分はキャッシュカードをだまし取られた被害者だと思っていたら、犯罪行為で捕まるとは。心底驚いたことでしょう。犯罪者に銀行口座を譲渡するのは犯罪収益移転防止法に違反する犯罪なのです。今回の事例では、20万円の罰金が科せられました。

 国から科せられる罰金は必ず払わなければいけません。たとえ破産したとしても免責されないのです。そして、罰金刑とはいえ、前科が付きます。キャッシュカードを渡した口座は凍結されますし、他に使っている口座も凍結される可能性があります。

キャッシュカードを渡すことは何の罪に当たるのか?

 キャッシュカードの譲渡は犯罪です。SNSで口座の売買が多数行われていますが、犯罪者に渡すために口座を開設すると詐欺罪に当たる可能性があります。しかし、今回の場合、キャッシュカードは郵送しましたが、1円ももらっていませんし、融資さえしてもらっていません。なぜ犯罪収益移転防止法に違反しているのでしょうか?

 それは、キャッシュカードを渡す代わりに、融資を受けようとしたのですから、そこに有償性があるためです。銀行口座を譲渡したとみなされてしまうのです。

 デジタルリテラシーというより、生活を送る上での大前提ですが、銀行口座を譲渡するのはNGです。たとえ残高がゼロでも、自分がお金を受け取るためでも、悪用しないと相手が言っていても、絶対に他人に渡してはいけません。