習近平国家主席が「歴史決議」を採択した。まさに中国が新しい時代に足を踏み入れるとの宣言だ。新時代に向かう経済では、「共同富裕(国全体で豊かになる考え)」が重視され、民間企業への締め付けは強まることが懸念される。習氏は経済活動の一部を犠牲にしてでも、習氏を頂点とした政治体制を作ろうとしているようだ。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
習近平を頂点とした政治体制
経済活動の一部を犠牲にしてでも
中国共産党の第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)において、習近平国家主席が「歴史決議」を採択した。同決議によって習氏は自らを、中国建国の父であり「文化大革命」の発案者の毛沢東、「改革開放」で中国経済の高成長を実現した鄧小平と「同列の存在」として、政権の長期化を目指す。さらには、生涯を通した「最高意思決定権者」の地位を確立するとの見方もある。
今回の歴史決議のポイントは、まさに中国が新しい時代に足を踏み入れるとの宣言だ。新時代に向かう経済では、「共同富裕(国全体で豊かになる考え)」が重視され、民間企業への締め付けは強まることが懸念される。習氏は経済活動の一部を犠牲にしてでも、習氏を頂点とした政治体制を作ろうとしているようだ。
足元、投資に依存したこれまでの、中国経済の成長モデルは限界を迎えている。本来ならば、中国は人々の自由を認めるなどの改革を進め、よりダイナミックに先端分野にヒト・モノ・カネの生産要素が再配分される環境を整備すべきだ。
しかし、香港や台湾への圧力の強化を見る限り、その展開は望み薄だ。むしろ、共産党政権による締め付けによって、資金や人材などの生産要素は海外に流出する恐れがある。中国経済は大きな曲がり角を迎えている。