日本の匿名掲示板として圧倒的な存在感を誇った「2ちゃんねる」や動画サイト「ニコニコ動画」などを手掛けてきて、いまも英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人などを続ける、ひろゆき氏。
10万部を突破したベストセラー『1%の努力』では、その部分を掘り下げ、いかに彼が今の立ち位置を築き上げてきたのかを明らかに語った。
「努力はしてこなかったが、僕は食いっぱぐれているわけではない。
つまり、『1%の努力』はしてきたわけだ」
「世の中、努力信仰で蔓延している。それを企業のトップが平気で口にする。
ムダな努力は、不幸な人を増やしかねないので、あまりよくない。
そんな思いから、この企画がはじまった」(本書内容より)
そう語るひろゆき氏。インターネットの恩恵を受け、ネットの世界にどっぷりと浸かってきた「ネット的な生き方」に迫る――
人を「パターン化」する
僕が今まで会ってきた経営者で、「楽してお金が儲かることを否定する人」は、ほとんどいなかった。
だから、経営者と話すときは、そこをうまく突いていくのが正攻法だ。
もし、お金がないなら、お金を出してくれる人を口説いて連れてくる。優秀なエンジニアがいないなら、優秀な人を見つけてきて発注する。人件費が高いなら、海外に仕事を出す。
そういう方法が、最も効率的だった。
ただ、アメリカ人の経営者と話をしたときにショックを受けたことがある。
「我々はお金には困っていない。なんでこれをやるのか、その意義はなんだ」と問われたからだ。
そうなってしまうと、議論がまとまらなくなってしまった。
大義名分を求めるような人とは、あとは「相性」しか残らない。フィーリングや価値観が合致するのは、男女が結婚するようなものと同じだろう。
それでビジネスがうまくいかなったとしてもクヨクヨする必要はない。
僕が相手と議論しているときに考えていることは、ただ1つ。
「この人は何を求めているんだろう?」
そのことに、考えを集中している。
人間の脳の記憶の仕方では、ある程度モデル化して覚えるようになる。
こればかりは、数をこなすしかない。
それをやった上で、「実績がないからダメだ」と言われたら、大人しく引き下がるしかない。日本では、そうやって判断されてしまうものなのだと諦めよう。
「予測不能なもの」に対価を
そうやって、人が求めていることを考えながら、相手をパターン化させてきた。そうして僕は実績を積み上げてきた。
すると次は、パターンから外れたものを楽しむ領域に入る。そうなれば、とても人生は楽しくなる。
たとえば、今週を振り返ってみて、1つでも「新しいこと」はあっただろうか。
子どもが生まれたり、転職が決まったりなど、大イベントはそうそう起こることはない。
ただ、「新しい人に会った」「新しいものを食べた」「新しい概念を知った」など、些細なことでもいいので、新しいことを1つ挙げられるだろうか。
パッと出てこなければ、あまり人生を楽しめていない可能性がある。
僕の場合は、次のようなルールを作っている。
「予測不能なものにだけお金を払う」というものだ。
知らない唐辛子があれば食べてみる、見たこともない飲み物は飲んでみる。あるいは、話の中で聞いたことないキーワードがあれば調べる。
「この1週間で、『新しいこと』はあっただろうか?」
ぜひ、それを思い返してほしい。
僕はたまに、ユーチューブライブをしているが、そこで鬼のように聞かれることは、「なぜ、そんなに物知りなんですか?」という質問だ。
別に僕は、博学でもなんでもない。知っていることを話しているだけだ。
ただ、世の中から見ると、物知りに見えるということは、当たり前のようにやっていることで差がついているということだろう。
それがまさに、「予測不能なものだけにお金を払う」ということであり、「知らないことは潰していく」という習慣だったりする。
同じ場所で、同じものを食べ、同じ仕事をし、同じ人間とだけ付き合えば、それは人前で話すコンテンツがないのも当たり前だ。
パターン化したら、次にいこう。
別パターンを楽しめる領域にいこう。
そうすることで、仕事も人生も、楽しんで取り組むことができる。
本名:西村博之
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、10万部を突破した『1%の努力』(ダイヤモンド社)がある。