コピーライティングを次の百年に

 ただ、私は、セールスコピーライターという仕事があることを知った瞬間、正直、疑いました。

 当時は糸井重里氏のようなイメージ広告のコピーライターは活躍していましたが、セールスに特化したコピーライターは、職業として広く認知されるまでに至っていなかったからです。

 そこで徹底的に調べたところ、コピーライティングの歴史はアメリカでは百年以上あり、確固たる職業として成立している、誇らしい仕事であることがわかりました。

 そして、日本でも神田さんが第一人者で、当時でも20年近く続いていることを知り、この職業に賭ける価値はあると思ったのです。

 本書のプロジェクトは、ダイヤモンド社(1913年創立)の寺田庸二編集長からの、「次の百年、読み継がれる百年書籍をつくりましょう」という激励から始まりました。

 寺田さんからは、編集のみならず、コピーライティングの本質に関する多くの気づきと発見を得る機会をいただきました。

 本書で触れた『ザ・コピーライティング』『伝説のコピーライティング実践バイブル』をはじめ、『ザ・マーケティング【基本篇】』『ザ・マーケティング【実践篇】』『最強のコピーライティングバイブル』(以上、ダイヤモンド社の“黄金のクラシックシリーズ”)などの分厚い書籍を編集されたのも寺田さんです。寺田さんの理解と熱意がなければ、本書が世に出ることはなかったでしょう。

 装丁・本文デザインの廣田清子さんは上記の“黄金のクラシックシリーズ”をすべて手がけておられ、今回も素敵なデザインに仕上げていただきました。

 このようにコピーライティングに深い理解をお持ちの方々とともに、次の百年につながる書籍をつくり上げることができ、本当にありがたく思っています。

あなたにお願いがあります

 本書を手に取っていただいたあなたに1つお願いがあります。

 本書で紹介したコピーライティング技術を、ぜひビジネスや日常生活に使っていただき、あなたが望むすばらしい未来を手に入れてください。

 そしてあなたの才能と努力で得た成功の一部分にコピーライティング技術があったことを、他の人にも伝えていただきたいのです。

 そうすることで、コピーライティングが次の世代に、次の百年に受け継がれていくと思います。

 コピーライティングは商品・サービスを売れるようにできる技術です。

 しかし、それだけではありません。

 コピーライティングの原理原則に沿って、商品・サービスが売れるように考えることは、その商品・サービスの魅力を掘り起こし、新たな価値を生み出すプロセスでもあります。

 このプロセスによって、あなた自身が、生まれ持った才能を表現する喜びを感じることができる。つまり、経済的な豊かさだけでなく心の充実感まで手に入れることができるのです。

 経済的に豊かで精神的にも充実していれば、様々な事情であなたより苦しい立場や弱い立場にある人を思いやることができると思います。

 リモートワークが当たり前になったことで、以前より世界中の人とつながることが容易になりました。

 あなたのビジネスのチャンスも大きく広がっています。

 コピーライティングがあなたの人生を豊かにし、ひいてはそれが社会の豊かさにつながり、物心ともに豊かで、弱い立場の人を思いやれる「余裕のある世界」になっていくことを願っています。

 次回は、日本のコピーライティングのパイオニア、神田昌典が編み出した人を動かす文章の構造「PASONAの法則」について紹介しましょう。

(本原稿は、神田昌典・衣田順一著『コピーライティング技術大全──百年売れ続ける言葉の原則』からの抜粋です)