今回の批判の背景にあるのは、2点ある。一つは「エイジング」についての昨今の考え方。もう一つは、「不安あおり型広告」への拒否感だと考える。

 男性の中には、「エイジング」と聞いて、すぐに「アンチエイジング」という言葉を連想する人も多いかもしれない。実際、加齢を防止する意味で10年ほど前までは美容業界で盛んに使われた言葉だ。

 しかし最近では、「アンチエイジング」という言葉は、女性誌の中であまり使われなくなっている。加齢や老化を一概に「悪」と捉えることへの拒否感からだ。

 朝日新聞が「アンチエイジング『もう使わない』 米女性誌が宣言」という記事の中で、アメリカの有名女性誌編集長が「アンチエイジングという言葉によって、『加齢と戦わなくてはならないもの』というメッセージを強めている」と発言したことを紹介したのは、2017年8月のことである。もう「アンチエイジング」は死語になりつつある。

 特に女性には「若い方が良い」という偏見があり、加齢をネガティブに捉える風潮が続いてきた。だからこそ逆に、これからはその価値観を変えていこうという呼びかけである。

 もちろん、長年続いてきた世の中の価値観がすぐに変わるわけではないが、これまでは「アンチエイジング」を率先して唱えてきた美容業界が、まず変わってはどうかという提唱だった。