テック株Photo:123RF

金利が上昇した局面でも
テック株は市場を上回っていた

「金利上昇はテック株に毒だ」。市場関係者は米国や欧州、その他の地域における長期金利上昇が、テック株の世界的な強気相場けん引を覆すと確信し、そのように言う。

 だが、歴史的に利回り上昇の局面では大抵、テック株が市場全体を上回るパフォーマンスがたたき出してきたことを彼らは見逃している。もし少し前までのような金利上昇局面が継続しても、その他多くの要因が絡み合うなかで、テック株上昇の終焉は程遠いと考えている。

ケン・フィッシャ―氏Ken Fisher/運用資産十数兆円規模の独立系運用会社、フィッシャー・インベストメンツの創業者。米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者。ビジネスや金融分野の出版物に多数寄稿し、投資関連の著書も数多い。父はウォーレン・バフェット氏が師と公言し、「成長株投資」の礎を築いた伝説的投資家である故フィリップ・フィッシャー氏

 テック株と利回りの動向を結び付けること自体は妥当だが、それは近視眼的な理論による。「その他の条件」が同じなら、高金利は将来利益の割引現在価値の低減につながる。そして、遠い将来の輝く利益予想がテック株にプレミアムを上乗せしたバリュエーションを裏付けているので、金利上昇は株価に大打撃だとする。こうした局面では、日本の資本財・自動車関連など、いわゆる景気敏感系のバリュー(割安)銘柄が推されることが多い。

 もっともらしい主張だ。だが、実際のところ、「その他の条件」が同じであることはめったにない。金利は、市場をけん引する銘柄の株価動向を左右する一因にすぎない。振り返ってみると、1973年以来、長年テック企業の中心地である米国で10年債利回りが上昇した月のうち、半分超でグローバルなテック株は世界株式のパフォーマンスを上回っていた。

 今日の世界におけるテック業界は、数十年前とは様相が異なっている。日本のテック企業は、依然としてハードウエアやチップ、電子機器に力を入れているが、世界のテック企業はおおむねソフトウエアやサービスへと移行した。そして、今も金利上昇にあらがっている。

 例えば2016年7月から18年11月上旬の間、米10年債利回りは1.37%から3.24%に上昇した。世界のテック株は90%上がり、世界株式の4割超という上昇率に勝っていた。なぜだろうか。