最強のテンバガー#11

レーザーテックは、EUV(極端紫外線)光を使ったシリコンウエハーに焼き付ける回路の設計図となるマスクの欠陥検査装置と、その原板となるマスクブランクスの欠陥検査装置で圧倒的な世界シェアを誇る。その背景には、リーマンショック後の不採算のFPD(フラットパネルディスプレー)事業の売却と、実現可能性がまだ見えなかったEUV光を使った検査装置の開発に踏み切った決断がある。その決断が結実し、2021年3月期は純利益ベースで8期連続の増収増益となる見通しだ。特集『最強のテンバガー』(全18回)の#11では、検査装置における競争力と今後の利益成長の可能性を検証した。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

今期は8期連続の増収増益に
10年で純利益は30倍、株価は95倍に

 現在、半導体業界の雄といえば台湾TSMCであり、韓国サムスン電子だろう。日本企業が後塵を拝するようになって久しい。だが、1980年代は日本企業が世界を席巻していた。例えば、1MDRAM(1メガビットダイナミックラム)では、東芝が世界のトップメーカーだった。

 半導体そのものの生産では、日本企業のプレゼンスは地に堕ちてしまったが、検査装置やフォトレジスト(感光剤)など生産に関わる周辺製品では、世界のトップグループに位置する日本企業は少なくない。

 半導体チップの材料となるシリコンウエハーに回路を焼き付ける際に使用されるマスクやその原板であるマスクブランクスの欠陥検査装置において、世界で圧倒的なトップシェアを握っているレーザーテックもその一つである。

 主力商品である半導体マスク欠陥検査装置で、経済産業省が特定分野で高いシェアや国際競争力を持つ企業を認定する2020年版「グローバルニッチトップ(GNT)企業100選」にも選ばれた。

 ニッチと認定されているように、同社の主力製品は決して市場規模が大きいものではないが、半導体の生産過程において歩留まりを上げるには欠かせないものである。「世の中にないものをつくり、世の中のためになるものをつくる」という同社の理念が反映されている。

 レーザーテックの株価は、2月19日時点で1万4210円。1年前と比べて2倍強、5年前と比べて42倍、10年前と比べるとなんと95倍である。

 株価上昇を裏付けるように業績も急拡大している。10年6月期の純利益は3億6100万円だったが、20年6月期はその30倍の108億2300万円にまで膨らんだ。営業利益も同期間に20倍に増加し、20年6月期は150憶6200万円となった。21年6月期には、純利益は39倍弱の140億円に達し、8期連続の増収増益となる見通しだ。営業利益も200億円を見込む。もちろん、双方とも最高益である。

 今後も、成長を続けることはできるのだろうか。レーザーテックがなぜ強いのか、深堀りするとともに、参入する新たな分野の可能性も検証していこう。