ハセン氏のもう一つの提案は、大統領選の勝者を決定する選挙人の集計方法などについて規定した「選挙人集計法(ECA)」の改正である。

 同氏によれば、2020年にはアリゾナ州とペンシルベニア州の選挙人のバイデン票を拒否した上下両院議員が100人以上いたが、根拠なしにそのようなことができないようにする必要があるという(PBS「ニュースアワー」、2021年10月7日)。

 1887年に制定されたECAは曖昧な点が多いと以前から専門家に指摘されていたが、トランプ氏はそこにつけ込んで選挙結果を覆そうとしたともいえる。

 その企てが成功しなかった理由の一つは、前出のラフェンスパーガー州務長官に加え、アリゾナ州のデュシー知事、ペンシルベニア州の州議会議員など、「勇気ある共和党員たち」がトランプ氏の要請を退けたことにある。

 しかし、2024年には彼らは選挙で落選してしまう可能性もあり、それを期待することはできない。

 また、来年の中間選挙で民主党が敗北し、上下両院を共和党が支配した場合、議会がトランプ氏に協力的になることも予想され、最悪のシナリオが現実になる可能性は高くなる。

 新型コロナ対策や物価高などの問題で支持率が低迷しているバイデン氏だが、民主党が両院を支配している間にECAの改正など大統領選の選挙工作を防ぐための対策に最優先で取り組むべきであろう。それが米国の民主主義と憲法を守ることにつながるのである。

(ジャーナリスト 矢部 武)