『週刊ダイヤモンド』12月18日号の第1特集は、「年末年始に家族で話す!生前贈与・駆け込み相続術」です。相続税と贈与税の一体化の議論が進む中、懸念された2022年度税制改正大綱では見送られましたが、近い将来、相続税対策の王道である生前贈与が“禁じ手”になる可能性が大です。相続のルールはどう変わるのでしょうか?自民党前税調会長、甘利明衆院議員への直撃と共に、年内に間に合う、お得な駆け込み贈与のための贈与と相続の基本のキから節税テクニックまで余すところなく伝授します。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
資産家から都市部の会社員まで
活用する生前贈与を“禁じ手”に

「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」――。
与党が昨年発表した2021年度税制改正大綱の一文に、資産家のみならず中間層にまで大きな動揺が広がった。なぜなら、その言わんとすることは、相続のルールを一変させ、相続税対策の王道たる「生前贈与」を“禁じ手”にすることで相続税の大増税を図る、という意味だからだ。
累進性の高い相続税の節税対策の鉄則は「課税対象となる財産を減らす」ことにある。その最強の切り札たる生前贈与は、資産家はもちろん、三大都市圏に自宅があることで少額ながら相続税が発生するような会社員にまで広く活用されてきた。
そんな中で降って湧いた「相続税と贈与税の一体化」の議論。最速の導入が懸念されていた12月10日発表の22年度税制改正大綱では見送られたものの、「現行の相続時精算課税制度と暦年贈与制度の在り方を見直す」「贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して何ら税負担を求めない制度であることから(中略)不断の見直しを行っていく」など、より踏み込んだ文言で一体化に向けた方針が改めて打ち出された。
本編集部の取材に、自民党の前税制調査会長、甘利明前幹事長は言う。
「財産移転の時期による有利、不利を失くし、いつ行っても税負担を同じにすることが一番大事。目下、(一体化によって)どういう問題が出てくるのか、そのシミュレーションをしているところだ」
最速の改正なら残された生前贈与のチャンスは残り3回。そうでなくても、近い将来、節税対策としての生前贈与を無効とする方向へと、大きくかじを切ることは間違いなさそうだ。
では、相続税と贈与税のルールは具体的にどう変わるのか?