過去の成功体験を捨て
TSMCとの連携を重視するインテル

 インテルにとって、TSMCは競争上のライバルから、「成長を目指すためのパートナー」に変わり始めた。2021年に入り、インテルは最先端の5ナノメートルの製品をTSMCから調達し始めた。さらにインテルが、TSMCが量産を目指す次世代(3ナノ)の生産ラインの「大部分を確保した」という観測も浮上している。両社の協業関係は、一層強化され始めていると見ていい。

 インテルの設備投資戦略も変化し始めた。同社はパッケージングなど微細化とは異なる分野で設備投資を進めている。生産能力を強化するといっても、インテルは「TSMCとの棲(す)み分け」を念頭に置いている。

 インテルはTSMCとの微細化競争に敗れたことを潔く認め、最先端のロジック半導体に関しては設計と開発に集中しようとしている。その意味は大きい。インテルはCPUなどすべての半導体の設計・開発・生産・販売を自社で完結する体制に、こだわらなくなっている。

 つまり、これまでの発想にしがみついていると変化への対応が遅れて、より多くの顧客を失う可能性が高まることを理解し、過去の成功体験を捨てたのだ。

 今後、自社で設計開発した最新のロジック半導体の生産のために、インテルはTSMCの最新の生産ラインを他社に先駆けて、より多く確保することを重視するだろう。それによってインテルはアップルやAMD、エヌビディアなどよりも高性能のチップをいち早く世界に供給できる。

 それができれば、アップルやマイクロソフトなどがインテルからのチップ調達を再度重視する展開もあり得る。このように考えると今後、世界の半導体業界で競争が激化するのはファウンドリ分野よりも、ファブレスの分野である可能性が高まっている。