半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾TSMCが、ソニーグループと共同で日本に半導体量産工場を設立すると発表した。背景には、日本政府からの積極的な誘致活動があった。しかし、政府の本気度に対して、民間企業には“温度差”があるように感じられる。その理由とは何か。また、日本の半導体産業を復活させるために、日本企業が目を向けるべき課題とは。(グロスバーグ代表 大山 聡)
「TSMC誘致」報道の背景に
見えた日本政府の“本気度”
今年に入ってから半導体不足が社会問題として取り上げられ、多くのメディアでも半導体関連の記事が目立つようになった。2月に台湾のTSMCが日本に研究所を設立するという発表が行われたが、これに対する過剰な期待を寄せる記事、あるいは事実に反する記事が多く、このニュースと半導体不足を無理やり関係付けようとする報道まで見られた。
この状況を看過できなかった筆者は、『台湾TSMCが半導体不足の自動車業界にとって「救世主」にならないワケ』および『台湾・TSMCが日本に子会社設立の真意、「日本に期待」の大誤解』という記事をダイヤモンド・オンラインに寄稿した。
記事の中で筆者は、「大手顧客の存在しない日本にTSMCが工場を建てる理由などない。年間3兆円もの設備投資を行う同社を、1000億円程度のはした金で誘致できるはずもない」と断じていたのだが、この予想は見事に覆された。
TSMCに関する国内での報道は、2月の研究所設立に関するニュースの後、6月11日には日本経済新聞が「TSMCが熊本県に半導体工場を建設する検討に入った」と報じた。筆者にとってはにわかに信じがたい内容であり、この件に関して当時、TSMCは一切コメントを発表しなかった。
しかし、この報道が出る直前に気になる出来事があった。