自社生産面では車載半導体を強化
モービルアイのIPO計画を発表

 TSMCとの協業に加えて、自社生産面でインテルは車載半導体の生産能力を強化しようとしている。同社経営陣がTSMCに言及しつつ、車載半導体事業の強化を強調しているのは、社内に取り組むべき分野を明示するためだろう。

 その象徴が、画像処理半導体の開発を行う子会社モービルアイのIPO計画を発表したことだ。最先端の製造技術を必要としない分野で、インテルはより効率的な事業運営体制の確立を急いでいる。

 自動車産業では、解消の兆しは出ているものの、車載半導体の不足感が続く。さらに、自動車とネット空間の接続や自動運転技術、シェアリング、電動化を指す「CASE」の取り組みが急加速し、マイコンに加えてパワー半導体の需要が増える。また、車載半導体は28ナノなど、どちらかといえば汎用型の生産ラインを用いて生産される。そのため、最先端の製造技術を持たないルネサスエレクトロニクスなど、日欧の半導体メーカーが存在感を維持できたわけだ。

 その点にインテルは勝機を見いだした。TSMCは次世代、次々世代の微細化など常に新しい半導体製造技術を確立して、利幅の厚いチップ生産に集中したい。ファウンドリ第2位のサムスン電子は、車載半導体の製造能力が十分ではない。

 インテルは微細化に関してはTSMCとサムスン電子に遅れたが、10ナノレベルの生産能力を持つ。その生産能力を生かすことによって、日欧など既存の車載半導体メーカーよりもより効率的にインテルが車載半導体の生産を行い、ビジネスチャンスを手にすることは可能だ。

 その判断に基づいてインテルは、アイルランドのCPU生産施設を車載半導体の製造に転用すると表明した。そのうえでモービルアイのIPOによって、まとまった資金を調達し、インテルはソフトウエア開発力と受託生産を含めた車載半導体の生産体制を強化する意向だ。となると結果的に、TSMCが汎用型の半導体生産に配分する経営資源を抑え、インテルがより多くのTSMCの最新生産ラインを確保する可能性がある。