茨城県つくば市に、世界最大のファウンドリーである台湾TSMCが半導体生産の「後工程」の研究開発拠点を新設する(5月31日発表)。ポイントは、TSMCが、半導体の部材を中心にわが国企業の生産技術をより重視し始めたことだ。わが国の半導体関連産業にとって、その意味は大きい。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
TSMCが「後工程」に注力
日本の生産技術を重視
世界全体で半導体の不足が深刻だ。背景として、まず、米中対立が激化した結果、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子に半導体の生産が集中したことがある。加えて、世界経済のデジタル化の加速や、わが国での半導体工場の火災などが重なり、半導体の供給が需要を大きく下回っている。
そうした状況下、茨城県つくば市に、世界最大のファウンドリーであるTSMCが半導体生産の「後工程」の研究開発拠点を新設する(5月31日発表)。ポイントは、TSMCが、ファウンドリーに加えて後工程も注力し始めたこと、そのために半導体の部材を中心にわが国企業の生産技術をより重視し始めたことだ。わが国の半導体関連産業にとって、その意味は大きい。
今後、最先端の半導体生産技術を巡る米中の競合は先鋭化するだろう。ということは、世界の経済、安全保障、地政学などの点で台湾、そこに本拠地を置くTSMCが世界経済に与えるインパクトは増すと考えられる。TSMCがわが国の半導体部材などを必要としていることを踏まえると、わが国の半導体関連企業はさらなる成長を目指す重要な局面を迎えた。