「変えること」が後継者の使命
中小企業経営者の後継者候補は、「ありのままの継承」が当然だと誤解しがちだ。すると、「現状の家業はもうからない」「時代に合わない」「競争が厳しい」「人手・資金不足」などの理由から、無理して続けるよりもこれを機会に家業に見切りを付けようという発想に陥る。
しかし、それらの課題をすべて克服しなければいけない義務はない。自身の生活スタイルに合わせて休暇を取ったり、報酬を自分自身で決めたりすることもできる。つらいことばかりではなく楽しいことも増えるように、自分の理想へ向けてかじを切ればいい。長寿企業が今日まで続いてきた理由の一つに、「時代に合わせて自己変革を繰り返してきたから」ということが挙げられるように、後継者候補には「変えることこそが、あなたに課せられた使命」ということを最初に伝える必要がある。
東京・日本橋に伊場仙という扇子商がある。徳川家康が江戸に幕府を開く前から続く老舗だ。14代目当主に当たる社長の吉田誠男さんに話を聞いた。