コロナ禍、そしてポストコロナでの社内新規事業は、何が変わり、何が変わらないのか?

新規事業を社内から量産するには?リクルート、ソフトバンク、NTTドコモの3大成功企業に学ぶ「仕組みのつくり方」笹原優子(ささはら・ゆうこ)
株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長
1995年NTTドコモ入社。iモードサービスおよび対応端末の企画、仕様策定にサービス立ち上げ時より携わる。その後携帯電話のラインナップおよびUI/ デザイン戦略を担当。2014年より新事業創出を目的とした「39works」プログラムを運営。社内起業家の支援を行う。2021年6月より現職。株式会社ローンディールのメンターとして社外の人材育成にも携わる。一般財団法人リープ共創基金、NPO法人 ETIC.にプロボノとして参画。2013年 MIT Sloan FellowsにてMBA取得。大阪大学招聘教員。

麻生:経年開催してきているからこそ見える景色って、ありますよね。コロナ禍で世の中も大きく変わってくる中で、この2、3年、社内新規事業ってどう変わってきていますか?

渋谷:2つくらいパッと浮かびました。1つは、リクルートでは「不」の課題を見つけて、それを解決することで新しい価値を作ろうというアプローチをしているんですけど、コロナ禍で「これ不便じゃん」という「不」がいろいろと顕在化しました。以前は「不を探す」と言ってもわかりづらかったのが、今はすごく具体に感じられる人が増えた気がします。なので「課題」や「不」の理解は深まったと思っています。

 逆に難しくなったことを挙げると、なかなかリアルに集まれないので、チームが作りづらいという声を聞きます。一方で、一次審査を通過したチームの中に「札幌と大阪と名古屋のメンバーです」というチームもありました。これは、Ringのオンライン勉強会などのブレイクアウトルームで、偶然一緒になったメンバーがチームになったケースです。

笹原:私たちもLAUNCH CHALLENGEをやっていてすごく心配しました。みんなリモート対応とか、仕事の仕方を変えるのにすごく疲れているから、応募が来るのかなと。

 ところがコロナを機に導入したSlackのおかげで、全国にいるグループ全体で2万7000人の社員たちに対して、東京中心だった頃よりもフラットに情報を出すことができました。Slackで「平等にたきつける」というか。すると、件数もあまり落ちることなく応募が来たんですよね。すごくよかったなと思っています。東京とか地方とかっていうのがフラットに感じるようになりましたね

 あと、チーム関係の話ですと、docomo academyをやることで、そのアカデミー生たちがたくさんLAUNCH CHALLENGEに出るようになりました。アカデミーはオンラインですけど3カ月くらいアツく一緒に過ごすので、すでにコミュニティができていて。そこでマッチングして出てくるとか。そういったことが起こりはじめています。去年立ち上げたばかりなのですが、効果はあるなと思っています。

佐橋:うちもお二人と同じだと思います。やっぱり、社会的な課題がすごくクリアになりましたよね。新規事業開発をやっている人からするとこんなにやりやすい環境はないので、そういうのは活発になったなと感じます。あと、あらゆる勉強会などを100%オンラインにしたので、地方からの参加者が圧倒的に増えました。都内の参加者数も増えているのですが、それはやっぱり移動時間も考えなくていいし、「ながら聞き」みたいなこともできちゃうからですね。全体でいうとすごく活発になったなっていう感覚はあります。

 一方で、渋谷さんと同じでチームアップは難しくなっています。リアルでなかなか会えないので。それでも、地方の人と東京の人が組むようなケースが増えているのも面白いです。あとはうちの場合5200名のプロフィールとかが載っているマッチングツールがあって、みんなそれを自由に見られるようになっているんですね。だから活発な人はそれで、新規事業に役立つ経験をしているかとか、どんな新規事業に興味があるかとかを見て、どんどん自分から声をかけてチームアップをやっています。

麻生:これからは大きな流れでいうと、ポストコロナに向かっていると思うんですね。この2年で起きた変化を踏まえて、この後ってどうしていくんでしょうか?

佐橋:うちは多分、ハイブリッドでやっていくんだと思います。チームアップだとかアイデアを発掘するときに、1次情報をいかに得るかがすごく大事だと思うんですね。だから課題を抱えている本人と直接会うのって、やっぱりものすごく大事で。そういう場はなるべくリアルでもやっていきたいなと思っています。

渋谷:僕もまさにハイブリッドだろうと思います。基本的には、集まることに対して社内のルールがあるので、まずはそれに従いつつ、オンラインとオフラインで、より効果的な方法を選択して実施していくことになると思います。さらには、突然やってきたこのコロナ禍によって「10年ぐらいかかると思っていたようなことが2年で起こっちゃった」というふうに見ると、より長尺で大きなビジョンの事業を集めていくことも考えなきゃいけないなという課題感も持っています

笹原:私は今ドコモ・ベンチャーズにいるので、ドコモ側は後任のみなさんに任せているところはあるんですが、感想としてはハイブリッドにしつつもオンラインベースが続くのかなと思っています。

 NTTの方針でも、単身赴任とかを廃止していくということが出ています。私自身も大阪から仕事をしていたりするので、オンラインベースで可能性を広げたい気持ちもあります。実際にdocomo academyで、オンラインのみで熱量を上げられることは実証しています。

 あと、コロナで社会が今まさに困っているときに早期に立ち上げていかないといけない事業もあるので、リーンで丁寧にやっているのをより素早くするか、少し大きめにして早く進めるかっていうのはやったほうがいいのかなと感じます。細かいお金で少しずつ検証して、というふうに積み重ねていくのではなく、管理側がリスクをとって少し大きく大胆に立ち上げていくというような。