「社内起業家 VS. 中間管理職」の乗り越え方
SB Innoventure株式会社 事業推進部 部長
ソフトバンク株式会社入社後、人事部門を経てソフトバンクグループ株式会社社長室へ異動し、経営戦略担当としてグループの中長期戦略策定や新規事業PJに従事。東日本大震災後、SBエナジー株式会社を設立し、事業企画部長として、メガソーラーを中心とした再生可能エネルギー事業を管掌。2014年よりSBイノベンチャー株式会社にて、ソフトバンクにおける社内起業プログラムの設計・運用、および個々の事業の成長支援を統括し、5200名の社内起業家育成プログラムの構築や約100件のPJのハンズオン支援を推進。2021年9月にSTATION Ai株式会社を設立し、スタートアップ向けインキュベーション事業を開始。他、STATION Ai株式会社 代表取締役社長、umamill株式会社 取締役、MICE Platform株式会社 取締役。
麻生:新規事業を提案する人の上司や、既存事業の中間管理職からすると「新規事業なんてやられたら、たまったもんじゃない」みたいな話ってありますよね。これって常に直面するものだと思うんですけども、どう捉えていらっしゃいますか?
渋谷:リクルートに関しては、さっき話した土壌の問題がちょっとあって。「新しい価値の創造」とか「リクルートに入社して、Ringに挑戦しないなんてもったいない」とか、そういうマインドセットがベースにある感じはします。故に、上司が「新規事業とかやってる場合じゃないだろ」って言うと、カッコ悪いってなっちゃう。もちろん、腹の中はいろいろな思いがあるかもしれませんが、基本的には応援してくれる人が多いです。「一緒に壁打ちやってやるよ」とか、なんなら「俺がチームに入ってやるよ」っていうマネージャーがいたりします。その土壌は大きいです。
参考にしていただけそうな仕組みとしては「Ring Meet」という、指名で壁打ちができるものを今年から始めました。事業開発経験者や既存事業で活躍して表彰された方に、ボランティアで壁打ち相手になってもらう仕組みです。そうして既存事業のスター社員が新規事業のメンターになるという構造になると、既存事業を含めた周りからRingの活動をポジティブに捉えてもらえる効果もあると思っています。
佐橋:うちは正直、人や組織によるっていう感じです。ただ社内起業って、1人うまくいった人が出てくると周りが刺激を受けて、同じ組織から提案が出てきたりすることが結構あると思うんですよね。最初は「おいおい、またあの組織から人が出ていくぞ」となっても、逆にマネジメントの成果として「イノベーターがどんどん生まれている組織だ」と誇りに思ってくれるような上司もいます。じゃあそういうムーブメントをどう広げていくか、ということに頭を悩ませている感じです。
やっぱり組織に引き止められたりする場面だってあります。これには正直、特殊な飛び道具があるわけではありません。熱量が高まっている起案者本人が「この事業にコミットしたい!」と示すのが、結局は一番刺さるんだなと思います。なのでその応援をいかに最大化していくか。イノベンチャーは人事と一緒にやっていて、「そういう仕組みです」と言い切っていたりします。
笹原:LAUNCH CHALLENGEは、人事部門との共催にすることで、より人を出しやすくしたりしています。やっぱりR&Dの一組織から突然言ってもなかなか難しいので、よりオフィシャルな形になるように。ポスターを積極的に各拠点に掲示したところ「あれに応募したいんです、と上司に話しやすかった」という声もありました。
自分がNTTドコモ・ベンチャーズに来てから、実はうちのメンバーが応募していたっていうことがあって。「嬉しいけど、稼働とられちゃう!」って思って(笑)。でもその心は殺してピッチも聞いてアドバイスもしました。そういう自分が該当者になると応援の気持ちもありつつドキッとすることもあることが改めてわかったので、やはり上司も含めた巻き込みは丁寧にやっていかないといけないなと思いました。