世界が日本を
「EV不毛の地」と呼ぶ背景

 グローバルでは、日本は「EV不毛の地」と呼ばれ、乗用車のEV化が進んでいないとみられています。これまでは、経産省とトヨタそれぞれがEVに関して後ろ向きだと批判されてきたことも事実です。

 直近の世界の新車販売に占めるEV車の比率はEUや中国ではだいたい12~13%であるのに対して、日本では1.2%程度。実際、知人でEV車に乗っている人を数えたら大半が「一人」か「ゼロ」と答えるように、日本ではEV車を見つけるほうが難しいというのが普及の実態です。

 しかも、その1.2%の大半を売り上げるのはトヨタではなく、日産か、テスラなどの輸入車です。実際、自販連(一般社団法人日本自動車販売協会連合会)のデータを見てみるとわかりますが、2021年11月のトヨタのEV車の販売台数はわずかに36台。トヨタの国内販売台数に占めるEV車の比率は0.04%というのが現状です。この数字から見ても、これまでは極めて後ろ向きだったことは事実だと思います。

 その状態からのスタートでありながら、2030年に年間350万台のEV車販売を目標に掲げるというのは確かに野心的な計画です。トヨタがEVに前向きに変わったと評価すべきだと、素直に思います。しかしこの野心的な計画は同時に、世界的な脱炭素の潮流から見ればかなり乗り遅れた数字だと言うことも報道すべきだと私は感じています。

 そもそもトヨタがこれまでEVに後ろ向きだったのは、それが国益にかなっていたからです。そのことを説明するために、世界的な脱炭素の流れと、その議論の場で戦われている「国益とは何か?」について整理してみましょう。