石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC加盟国でつくる「OPECプラス」は、毎月日量40万バレルを段階的に増産する従来の方針を2022年1月も維持することを決めた。原油高の恩恵を享受してきた石油元売り業界には二つの落とし穴が迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
消費国との“正面衝突”回避
増産継続は市場の予想通り
OPECプラスが従来の方針を維持し、2022年1月も日量40万バレルを増産することが決まった12月2日、国際的な原油価格の指標である米国のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は、一時5%近く下落したものの、前日比0.93ドル高い1バレル当たり66.50ドルで取引を終えた。
OPECプラスの決定に対して原油相場は、冷静な反応を示したのだった。これについて、マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役は「消費国との“正面衝突”を避けるOPECプラスの増産継続の決定は、市場が予想していた通り」と分析する。
新村氏が指摘するように、原油を巡ってこの2カ月間、産油国と消費国の“対立”が表面化していた。きっかけとなったのは、原油価格の抑制を狙って米国が主導した、日本、中国、インド、韓国、英国と協調して表明した石油の戦略備蓄の放出である。
原油価格は今年9月に70ドルを突破し、7年ぶりの高値圏に突入していた。世界各国でインフレが加速していて、原油高は新型コロナウイルス禍からの経済回復にブレーキがかかりかねないとの懸念が広がった。
米国内でガソリン高への批判にさらされたバイデン米大統領は、産油国側に対して増産幅を拡大するよう要請。しかし、OPECプラスは11月の会合で従来の方針を維持し、バイデン大統領の要請を受け入れなかった。OPECプラスは、コロナ禍が終息したわけではなく、石油需要は依然として不安定だと判断したのだ。
産油国側から“ゼロ回答”に業を煮やしたバイデン大統領が主導する形で、主要な消費国は石油の戦略備蓄の放出に踏み切った。これに対し産油国側は増産の停止、縮小で対抗するのではないかと、対立が先鋭化する恐れがあった。
そんな中で、新型コロナウイルスの変異株、オミクロン株が出現した。再び世界経済に不透明感が漂い始め、渡航制限やロックダウン(都市封鎖)によって需要が落ち込むとの思惑が広まり、原油価格は一気に70ドルを割り込んだ。