「お祈りメール」を送った企業と受け取った就活生が“幸せ”になる方法

現在、「就活うつ」や就活を苦にした自殺などが社会的課題になっている。コロナ禍の不安や孤独感から、より追い詰められている学生も少なくない。こうした就活の大きな課題に切り込み、就活生と企業の新たなマッチングを生み出す仕組みがWEB上のプラットフォーム「ABABA(アババ)」だ。運営する株式会社ABABAの久保駿貴氏(CEO)は、友人が第一志望の企業に落ちたことをきっかけに、「お祈りメール」を他社への推薦へと変えるこのサービスを立ち上げたという。サービスに込めた思いとその仕組み、今後の展望について聞いた。(構成・文/佐藤智 レゾンクリエイト)

「いっそうのご活躍をお祈り申し上げます。」という一文

 コロナ禍で、新卒採用についての不安を抱くのは企業の人事担当者だけではない。学生側も、従来型のインターンシップやOB・OG訪問を行えず、また、説明会もオンラインとなり、就職活動(以下、就活)をどう進めてよいかに悩んでいる。「就活うつ」という言葉が知られるようになり、さらに、あまりに痛ましいことだが、20代の若者の自殺は年間2000人以上に及び*1 、その中には就活を苦にしたものも少なくないという。

 株式会社ABABAは就活が抱えているこうした課題に切り込む仕組みを構築している。企業は「ABABA」を利用することで、自社で採用できなかった学生をプラットフォーム上で推薦し、他社の選考へと後押しできる。同社CEOの久保駿貴さんは、自身の大学時代の経験をもとにこのサービスを立ち上げた。

*1 警察庁「令和2年中における自殺の状況」より

久保 ABABAを立ち上げたきっかけは、僕の友人が就職活動で大きなダメージを受けていたことでした。大学3年生になると、僕の周りにいる多くの友人が就活に明け暮れ、企業からの合否連絡に一喜一憂していました。その中で、ひとりの仲のよい友人に、最終面接まで進んでいた第一志望の企業から「お祈りメール」が届きました。僕は友人から来た「あばばばばば」の文字と顔文字付きのメールで、言葉を失うほどショックだったのだと察しました。その時の友人の表現が弊社の名前の由来となっています。

「お祈りメール」とは、企業からの不採用通知の通称だ。「いっそうのご活躍をお祈り申し上げます。」の一文で締めくくられることから、就活生の間でそう呼ばれている。就活生は、1社の選考にあたり、平均12時間ほど*2 の時間をかけているというデータもある。いうまでもないが、時間と労力をかけて最終面接にまでたどり着いたにもかかわらず不採用になるということは、学生にとって大きなダメージとなる。

*2 エントリーシート提出にかかる時間3.8時間/社+面接2.7回/社×3時間/回=11.9時間/社
就活生がESにかける時間の平均=1枚あたりにかける時間の平均は3.8時間(リクナビ/2013年調査より)、新卒採用における面接回数=2.7回(リクナビ/就活ジャーナル2019年調査より)

久保 その友人は、「もうこの会社が関わる商品は一生買わない!」と声を荒げていました。周囲の僕らは彼に声をかけて励まし続けましたが、日に日に元気を失って、ついには「うつ」のような状態になってしまいました。僕は、憔悴しきった彼の様子を見て、「なぜ、こんなに理不尽なことが起きているのだろう……」と大きな疑問を持ちました。

 問題は友人の心痛だけではありません。第一志望に掲げるほどその企業の「大ファン」だったのが、不採用通知により、一気に企業の「大アンチ」に変わってしまう。これは会社にとっても大きな課題なのではないかと考えたのです。

久保駿貴

久保駿貴 Shunki KUBO

株式会社ABABA 代表取締役

1997年生まれ。兵庫県出身。2021年、岡山大学理学部卒業後、神戸大学大学院海事科学研究科入学。同年9月をもって退学し、10月より岡山大学大学院に進学。岡山大学在学中に「最終面接までの頑張りが評価され、オファーが届く新卒採用のサービス」を提供する株式会社ABABAを創業。同サービスは経済産業大臣賞受賞。全サービスをノーコードで開発したスタートアップとしても注目される。