トンネルの先の見えないコロナ禍で、「対人コミュニケーション」の方法はリアルでの対面機会が減り、その希薄さや不自由さが多く語られるようになった。企業が就職活動中の学生に求める能力としても必ず上位にあがる「対人コミュニケーション」だが、企業側の欲する“コミュニケーション能力”と学生側が考える“コミュ力”には隔たりがあるようだ。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)
企業は「対人コミュニケーション力」を重視している
長引くコロナ禍によって、職場でのコミュニケーションのあり方が大きく変化した。毎日顔を合わせての他愛ない雑談がなくなり、同僚と話さずに自宅で仕事をする働き方も当たり前になっている。昨年度(2020年度)の新入社員は入社当初からリモートワークでの勤務もあり、職場への参加意識を保てず、上司も本人も不安だという話も聞く。言うまでもなく、ビジネスシーンにおいて「コミュニケーション」は重要だが、企業の採用担当者は学生の「コミュニケーション能力」をどのように捉えているのだろうか。
株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースが発表する「2021卒 採用・就職活動の総括」に興味深いデータが掲載されていた。「企業の選考重視点と学生のアピールポイント比較」である*1 。
企業の選考重視点とは、採用する人物が備えていてほしい能力・特徴を示したもので、昨今話題に上るように「対人コミュニケーション力」が圧倒的に望まれており、次いで、仕事への意欲・興味、協調性、行動力、信頼感などが続く。それに対し、就職活動中の学生は、粘り強さ・責任感を強くアピールしたいと考えており、次いでアルバイト体験、仕事への意欲・興味、行動力、対人コミュニケーション力、と続いている。
過去はどうであったのかと、「2016卒採用・就職活動の総括」と見比べたところ、企業が選考で重視する点は、2021卒とほとんど変わらずに「対人コミュニケーション力」が強く求められていた。
また、別会社による「職場のコミュニケーションに関する調査」*2 でも、回答者の9割が「コミュニケーションの円滑さが仕事にも影響する」と答えているなど、働くことと対人コミュニケーションは切っても切れない関係にある。これほど「対人コミュニケーション力」が重要と考える企業が多いのはなぜか。企業内でのコミュニケーションにそれほどの危機感があるのだろうか。そもそも、コミュニケーション、コミュニケーション能力(コミュ力)とは、何を、どのようなものを指しているのか。
*1 株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース「2021卒 採用・就職活動の総括」中の「DATA.15企業と学生の意識格差」より
*2 エン・ジャパン「職場でのコミュニケーションについてのアンケート調査」=インターネット調査 調査対象:『エン派遣』を利用しているユーザー、調査期間:2020年9月11日~11月1日 有効回答数:4790名
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