「お祈りメール」を他社への推薦につなげる仕組みとは?

 これまで、不採用の学生に対しては、企業は「お祈りメール」を送るだけだった。しかし、最近では各社が工夫を凝らして、不採用者に対して丁寧に接し始めていることが話題になっている。たとえば、ある食品メーカーは採用試験を受けた候補者全員にお礼のメッセージと商品を送って感謝の気持ちを伝えている。また、各人に向けて面接のフィードバックをすることで知られている企業もある。こうした各社の工夫だけでなく、不採用の学生への感謝や応援を伝えられる仕組みとしてABABAは注目されている。

久保 企業はこれまで学生へ送っていた「お祈りメール」の文面に、ABABAへの登録を促す一文を追加します。学生がABABAへ登録した後、任意で人事担当者が面接評価シートを入力し、他社へ推薦をします。こうした推薦文を見て、ユーザー企業から学生へスカウトが届く仕組みになっています。

 ABABAの利用は、特に採用活動の後半戦でのメリットが大きいと考えられる。採用の後半になると、“優秀層”の学生の大半は内定を決めているが、ABABAには他社で最終選考まで進んだ学生が再度母集団を形成して存在している。たとえば、予想以上に内定辞退者が多かった場合などにおいては、企業にとって頼りになるタレントプールとして機能するだろう。

久保 ABABAには優秀な学生が集まっているのですが、その「優秀さ」には特徴があると考えています。他のスカウト型サービスでは、高学歴層の取り合いという一元的な競争が起きています。しかし、ABABAでは学歴だけでなく、「競争率の高い企業で最終面接まで進んだ学生」や「特にコミュニケーション能力が長けている学生」などの特徴を把握してアプローチすることができます。ABABAでしか探せない優秀な学生がいるのです。

 ABABAを使うことで、不採用とした企業と就活生の関係性は大きく変わる。不採用通知を受け取ることは学生にとって残念だが、自身のよさを理解したうえで、他社への推薦につなげてくれるようであれば、「大ファン」が「大アンチ」へ変貌することは少ないだろう。

久保 ABABAにおいては、推薦した人事担当者と推薦された学生のチャットで交流が生まれ、「不採用になった後にもフォローしてくださる御社のあたたかさが大好きです」や「いつか必ず成長してキャリア採用に挑戦します」といった学生からのコメントが見られるようになっています。

 CX(カスタマー・エクスペリエンス)は、今後、採用現場でも意識されていく必要があると考えています。実際にアメリカのある研究では、企業側から良い選考体験を提供された候補者とそうでない候補者には、その行動に大きな差が生じることがわかっています。具体的には、「良い体験」を経た候補者の場合は企業の顧客になる割合が53%なのに対して、「良くない体験」だった場合には25%にまで低下します。特に大量の採用候補者がいる企業においては、選考をプラスの体験にしていくことが経営においても非常に重要なポイントになっていくと言えるでしょう。