脱炭素国際ルール策定で主導権を取れなければ、本邦企業の競争力は低下し、経済にはマイナスの影響が及ぶ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

カーボン・クレジットの取引が盛り上がり、既にバブルの様相を呈している。一例が航空業界だ。二酸化炭素1トン当たりのクレジット価格は、21年1月4日の80セントから11月10日には8.35ドルに上昇した。価格高騰の原因の一つは、世界で統一されたルールがないことだ。わが国は、エネルギー政策の転換と脱炭素に関する国際ルール策定に、より真剣に取り組まなければならない。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

国際統一ルールがなく
短期的にはゆがんだ状況が続く

 世界的に脱炭素の潮流が注目される中、カーボン・クレジットの取引が盛り上がっている。市場参加者の“準備不足”もあり、既にバブルの様相を呈している。

 カーボン・クレジット取引とは、炭素税や排出量取引制度に代表される「カーボン・プライシング」(二酸化炭素の価格付け手法)の一つだ。具体的には、森林保護など温室効果ガスの排出削減事業を第三者が認証し、認証された削減量(クレジット)を民間企業が購入する。

 航空や鉄鋼、石油など温室効果ガスの排出量が多く、なおかつ削減も難しい企業は、脱炭素が加速する環境下での事業運営に危機感を強めている。企業は社会の公器として利害関係者に脱炭素に取り組む姿勢を示し、理解と賛同を得なければならない。そのためカーボン・クレジット市場がバブルとなっている。最大の原因は国際統一ルールがないことだ。短期的にはゆがんだ状況が続くだろう。

 その状況は是正されなければならず、国際統一ルールの策定は急務である。わが国は米国やアジア新興国との連携を強化してカーボン・プライシングなどに関する見解を共有し、脱炭素で国際世論をリードしようとする欧州委員会に「待った」をかけなければならない。脱炭素に関する国際ルール統一に岸田政権がどう取り組むかは、わが国経済の展開に決定的な影響を与える。