ミクシィがFC東京を「子会社化」した理由、入場料収入激減中でも勝機あり?左からミクシィの木村社長、FC東京の川岸次期社長、FC東京の大金社長 撮影:藤江直人

首都・東京をホームタウンとする現時点で唯一のJ1クラブ、FC東京の経営権をIT大手のミクシィが取得した。世界的なヒットを記録したソーシャルゲーム「モンスターストライク」の配信で知られるミクシィは、なぜFC東京を子会社化したのか。Jリーグの舞台で何を手がけていきたいのか。そもそもどのような接点を持ったのか。スポーツ事業を次なる柱に据える同社の戦略を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

FC東京2度目の転換点
「こんなチャンスはない」

 首都・東京をホームタウンとする現時点で唯一のJ1クラブで、前身の東京ガスサッカー部時代を含めて90年近い歴史を持つFC東京が2度目の転換点を迎えた。

 最初が1998年10月1日。東京ガスや東京電力を含めた計161の団体が出資して設立された東京フットボールクラブが運営法人となり、クラブ名称もFC東京と改められ、翌1999年シーズンからJ2へ初参戦する体制が整えられた。

 2度目がまだ記憶に新しい2021年12月10日。東京フットボールクラブが開催した臨時株主総会で、IT大手のミクシィ(本社:東京都渋谷区、社長:木村弘毅)の子会社となり、クラブの経営権を委ねることが全会一致で承認された。

 ミクシィは第三者割当増資で、新規発行される東京フットボールクラブの2万3000株を1株5万円、合計11億5000万円で引き受けた。この結果、ミクシィの保有株式は1000株から2万4000株へ、議決権所有割合は4.2%から51.3%へ一気に増えた。

 東京ガス出身で、15年2月から東京フットボールクラブの第5代社長を務めてきた大金直樹氏は、今回の経営権移行をポジティブに受け止めている。

「クラブの可能性を大きく広げていく上で、こんなチャンスはないと思っている」

 東京フットボールクラブの経営は、特定企業の影響を受けない、という方針が貫かれてきた。母体になった東京ガスの持ち株比率は数%で、実は親会社ではなかった。

 クラブ黎明期の経営は出資団体の中で東京ガス、東京電力、エーエム・ピーエムジャパン、テレビ東京、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、日本石油、清水建設、三菱商事の8社が中核を担い、クラブを見守る形で進められてきた。

 株主が370を超える今現在は、中核企業の顔ぶれも一部が変わった。東京ガス、三菱商事、清水建設に三井物産、きらぼし銀行、東京メトロポリタンテレビジョン、そして18年から株主およびスポンサーとして加わったミクシィの7社が担ってきた。

 19年からはマーケティングパートナーも務めてきたミクシィは、世界中で大ヒットを記録した「モンスターストライク」に代表されるソーシャルゲームの配信で知られる。FC東京との接点はどこにあったのか。木村社長はこう語ったことがある。

「私たちは東京都渋谷区に根を生やして活動してきた会社なので、東京のチームを応援したい気持ちが常にあったのは間違いありません」