医者が解説!「ガマンするダイエット」でますます太る決定的な理由Photo:PIXTA

「ダイエットにガマンは付き物」「厳しいカロリー制限をしないと痩せられない」――。こうしたイメージが根強いが、最新の医学知見に基づけば、どちらもウソ。産業医として年間5万人に健康指導を行う総合内科専門医の益江毅医師は、著書『やせたい人はカロリー制限をやめなさい』の中で「ガマンのダイエットはかえって逆効果」と強調する。人体には、ストレスがかかること自体が、肥満や体重増加につながってしまうメカニズムがあるからだ。2021年米国栄養学会が提唱した「炭水化物―インスリンモデル」に基づく最新ダイエット法とは?(文・監修/総合内科専門医 益江毅)

減量のカギを握るのは「インスリン」

 なぜ人は太るのでしょうか。かつて定説とされてきたのは「摂取カロリーが消費カロリーよりも多いときに、余ったカロリーが脂肪となる」という、いわゆる「エネルギーバランスモデル」でした。この定説が正しいなら、タンパク質、炭水化物、脂肪の摂取カロリーを減らせば、あるいは運動を増やして消費カロリーを増やせば、体重を落とすことができるはずです。

 ところが実際はどうでしょう。食事を我慢する、頑張って運動をするといった努力をしても、なかなかダイエットを成功させることができません。一時的に減量に成功しても、その結果を維持できず、必ずと言っていいほどリバウンドします。

 そこで世界の研究者は「そもそもカロリー制限という常識が間違っているのかもしれない」という視点を持ち始めました。

 2021年9月、米国栄養学会は肥満の原因をカロリーのとりすぎが原因とする「エネルギーバランスモデル」から、肥満にはインスリンが深く関わっているとする「炭水化物―インスリンモデル」へと大きく方向転換をしました。これは「肥満の原因は、炭水化物を多くとることによってインスリンが脂肪の蓄積を促進している」という考え方です。炭水化物を多くとると、血糖値が上昇し、それを下げるためにすい臓からインスリンが分泌されます。このインスリンによって、脂肪細胞での脂肪貯蓄が促進するのです。

 長い歴史の中で、人類は飢餓と戦う時期の方が圧倒的に長かったので、低血糖になった時に血糖値を高くしてパワーを引き出すシステムの方が発達しています。しかし、血糖値を下げるホルモンがインスリンただ1つしかない、ということが、ダイエットを難しくしている原因の1つになりました。飽食の時代では、インスリンは過剰な分泌を余儀なくされ、その結果、インスリンを分泌するすい臓が疲弊しきってしまう「糖尿病」が一気に増えました。