「有休を取る理由が書いてないのに許可できるか!」

 Bは大声を上げ、反論した。「自分は無断欠勤なんかしていません。だってA課長に『有給休暇申請書』(以下、「申請書」という)を提出したじゃありませんか!」。

 A課長も、負けじと言い返した。「確かに私の机上にその書類があった。しかし、年末は仕事が忙しいし、申請書には年次有給休暇(以下、「有休」という)を取る理由が書いてない。そんな状態で許可するはずがないじゃないか。それを自分勝手に有休扱いにしたんだから、無断欠勤も同然だ」。

 2人の言い争いは続いたが、最後にBが、「社員が有休を取ることは当然の権利だって、最近ネットの記事で読みました。それなのに許可制なんておかしいですよ! ただでさえ普段から忙しくて、今まで申請してもほとんど有休なんて取れたことがないから、今回は強行突破したんです。とにかくクビ扱いなんて納得できないので、今から労働基準監督署に行って相談してきます」と言い残し、去っていった。

 その後A課長はC社長に、Bが出勤してきたことと2人で言い争った内容を報告した。C社長はそこで初めてBが会社を休む前に申請書を提出していたこと、A課長が仕事の繁忙期を理由にBの有休取得を許可していなかったことを知った。

「A課長、この件はB君をクビ扱いにすると大変なことになるかもしれない。私はD社労士に対処方法を相談するから、君はすぐB君に連絡して労働基準監督署に行くのを待ってもらうように説得してくれ」