TPPが選挙の争点となっている。民主党は一貫してTPP交渉参加を表明しているが、自民党は「聖域なき関税撤廃が条件である限り、反対」としている。一見すると、両者の主張は対立しているが、注意深く各党幹部の過去の発言などを見ていくと、大きな方向性は賛成の方向へ進んでいると、馬田啓一・杏林大学教授は話す。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

党内の反対派に配慮
自民、民主は曖昧に

――各党の公約にはTPPに対する姿勢が表明されているが、どのように見ていますか?

うまだ・けいいち
1949年生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。杏林大学総合政策学部大学院国際協力研究科教授。国政貿易投資研究所客員研究員。主要著書に『通商政策の潮流と日本』(共編著、勁草書房)、『日本のTPP戦略 課題と展望』(共編著、文眞堂)
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 各政党の姿勢を見ていると、反対と賛成、曖昧のところ、という3つに分けられる。一番はっきりしているのはみんなの党で、賛成している。反対は社民党や共産党、国民新党だ。一方で、民主党と自民党の2つは曖昧だ。

 民主党は基本的にTPP賛成としている。野田佳彦首相は参加すべきだという考えを持っており、11月の東アジアサミットでTPP交渉参加を宣言したかったはずだ。ところが、党内にはTPP反対派もいて、交渉参加を宣言すれば離党者が出てしまう。あのとき、間近に迫る選挙に向けて、党の結束を考えなければいけなかった。それで、TPPに関する発言がトーンダウンした。

 民主党のマニフェストにはアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)実現へ向けてTPP、日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携の3つを同時に進めていくとしている。私は、これは正論だと思う。だが、トーンダウンして、「政府が判断する」という文言がある。これは党内のTPP反対派に配慮した妥協の産物で、腰砕けだ。

 TPP反対派が選挙で戦いにくくないようにする政治的な判断があった。野田、前原、岡田、細野などの執行部はTPPを進めていくべきだという考えを持っているため、党としては強く推し進めていくような体制にはなっている。

 自民党は、「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対します」と明記している。安倍晋三・自民党総裁は「TPPは積極的に進めるべき」という発言を過去にしているが、民主党と同じように自民党にもTPP反対派がいる。したがって、反対派への配慮をしつつ、農村部の票を取り込み、確実に政権を奪還するために、公約のなかでははっきりとした言い方を避けた。