美を妥協してはいけない

 HOSOO FLAGSHIP STOREも、銀行からは「ゼネコンに一括で頼めば三分の二ほどの金額でできるのに、なぜそんなに予算をかけるのか」と言われました。

 でも、細尾としては、そこで美を妥協してはいけないと考えました。

 建てたときはピカピカなのに、ときが経つにつれて劣化するのが「経年劣化」です。

 そうではなく、「経年美化」するような建築を実現したいと思いました。そのためには、本物の素材をふんだんに使う必要がありました。

 さらに様々な職人の多様な工芸技術を、リスペクトの念を込めて建築に取り入れることで、「多様な要素が調和している状態が美しい」という西陣の美意識を表現することもできます。

 これは一二〇〇年続いてきた、究極の美の追求の答えです。

 そういった意味でも、「本物」を極めなければいけなかったのです。