1万円札Photo:PIXTA

「新しい資本主義」を掲げる岸田文雄首相だが、岸田首相に任せておくと、福祉国家と新自由主義のそれぞれのメリット部分を選んで捨てる組み合わせになりそうで心配だ。矛盾するように感じるかもしれないが、「小さな政府で大きな福祉」が目指すべき「新しい資本主義」の姿だと筆者は考える。そして、ベーシックインカムならそれが実現できる。その理由を説明したい。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

史上最大107.6兆円の予算案だが
政府の全体像は全く見えない

 1月17日、通常国会が始まった。与党が圧倒的に優勢なので、国会の推移にドラマ的な興味は全く湧かないが、2022(令和4)年度の予算案の通過辺りが演出上の山場になるのだろう。

 その予算案は、昨年の12月24日に閣議決定された。読者もご存じのように、約107兆6000億円と当初予算案としては史上最大の規模だ。

 予算案に関する報道では、社会保障費が増え続けていることと、国債への依存の増大を「懸念」することが定番になっている。仮に、予算案の記事を書くのが新米記者なら、そのフォーマットで記事を書くのが無難だ。しかし、畏れ多くも国家予算の記事だから、現実にはベテラン記者が書いているのではないだろうか。だとすると、つくづく進歩のない人たちだ。

 いわゆる予算案と称されるのは一般会計の予算だが、一般会計を見るだけでは政府の全体像は全く見えてこない。企業グループで言うと、事業の一部と金融機能を持った持ち株会社のお金の出入りだけなので、「株式会社日本政府グループ」の経営の効率がいいのか、財政状況がどうなのかはサッパリ分からない。