視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。
「史上最大のベストセラー」を
出版できるからくり
良書をダイジェストにして紹介するという仕事柄、アマゾンなどの「売れ筋」ランキングには定期的に目を通すようにしている。アマゾンには、本のジャンルごとに100位までのランキングページがあるのだが、そのほかに、個々の書籍の紹介ページに「ベストセラー」のアイコンが表示されていることがある。
何気なくランダムにアマゾンの「本」のページをブラウズしていると、どう考えても一般的には売れていないだろう、というような本にベストセラーのアイコンが付いていることがある。「なぜだろう?」と思いながら、ページの下の方にある順位までスクロールすると、総合では1万位以下なのだが、とてもニッチなジャンルで1位になっている。
アマゾンでよく本を探す人であればご存じだろうが、アマゾンではかなり細かくジャンルが細分化されている。例えば「科学・テクノロジー」の中に「寄生虫学」があったり、「趣味・実用」に「ダーツ」があったりする。
ベストセラーアイコンが目に留まったおかげで、思いがけない良書との出会いがあったりもするので、悪いことばかりではない。だが、時間がないときに、たまたま目に入ったページにベストセラーアイコンがあったとしたら、「ああ、今はこんな本まで売れるようになったんだな」と早合点するかもしれない。売れている理由を自分なりに推測して納得してしまうこともあるだろう。「ウイルスがまん延しているから、寄生虫の本がバカ売れなんだな」というように……。