脱炭素の潮流は、メガバンクグループに巨額な資金需要のチャンスをもたらす。ただし「カネを出す」だけでは、顧客からそっぽを向かれかねない。そんな中で三井住友フィナンシャルグループが、「CSuO」という旗振り役を設置するなど、組織体制を作り変えた上で新戦略に打って出た。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
三井住友がGHG排出量算定サービスを開発
脱炭素で銀行の「環境コンサル」化が加速
「どうやったら自社のGHG(温室効果ガス)排出量を効率的に計測できるのか。そこに問題意識を持つ顧客がかなり多いことに、この約半年で気が付いた」
三井住友フィナンシャルグループ(FG)の伊藤文彦CSuO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)は、新事業の裏側にあった課題をこう語る。昨年11月に発表した、グループ傘下の三井住友銀行と日本総合研究所が共同開発した「Sustana(サスタナ)」と呼ばれる企業向けのサービスだ。
多くの企業はグローバルに拠点を展開しており、自社のGHG排出量を正しく把握するのは難しい。しかし脱炭素社会において企業は自社のサプライチェーン全体の排出量を把握することが求められ、その難易度が格段に上がっているのが現状だ。
そこでサスタナは、エネルギー使用量などのデータを基に、企業とそのサプライチェーンのGHG排出量を算定。その算定業務の流れを確立しながらクラウド上でデータを収集し、排出量を効率的に「見える化」するサービスだ。
GHG排出量を算定する内製化サービスを立ち上げたのは、邦銀では三井住友銀行が初めてだという。昨年12月から一部の企業で試験導入が始まっており、今年4月頃の正式な販売開始を目指す考えだ。
銀行の「環境コンサル」化へ――。今回の三井住友銀行の取り組みは、脱炭素社会が本格到来する中で、メガバンクグループの存在意義が大きく変わらざるを得ないことを示唆している。
だが、変わるためには突破しなければならない巨大な壁がある。